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元エース、気迫の救援 早実・高島敷仁投手=神宮 |
高校最後のマウンドは、7点を追う苦しい場面で回ってきた。
5回2死。早実の高屋敷仁君は、2本目の本塁打を浴びた先発の2年生斉藤佑樹君から「お願いします」と託された。
日大三の打者は、捕手の武石周人主将が「調子づかせたくない」と警戒していた1番バッター。変化球でコースをついて1ストライク。1球ボールを挟んだ後は、直球で追い込み、テンポ良く空振り三振に仕留めた。
深くかぶった帽子がずり落ちるほど、気迫を込めた投球。「打ちとる自信はありました。気持ちを前に出していくのが僕のスタイルなんです」
昨秋の新チーム発足時の背番号は「1」。しかし、秋と春の都大会で良い結果が出せず、この夏、手渡されたのは「10」。
悔しかった。だが、斉藤君を救援する役回りに徹した。「斉藤に負けたとは思わないけど、甲子園に行くにはそれがいいのかなって」
5回戦の東海大菅生戦。斉藤君が2点差まで追い上げられた7回2死から登板。9回に最後の打者を空振り三振でとって役目を果たすと、両手を広げ、雄たけびをあげた。
斉藤君が「初回から飛ばします」と言ってマウンドに向かった準決勝。「今まで、あいつが勝ってくれたからここまで来たんです」。もう、1点もやらない。9回まで投げきる覚悟で、救援にむかった。
早実が1点を返した後の6回裏。走者を背負って4番打者を迎えた。フルカウントの後、直球で空振りさせた。続く打者も左飛にとり、失点0。
「このままじゃ終われない、とよく投げてくれた。斉藤が成長したのも高屋敷がいてこそ」。和泉実監督はねぎらいの言葉を口にした。高屋敷君は「神宮を精いっぱい楽しみました」と言って球場を後にした。