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田辺敏和捕手 |
横浜打線の振りの鋭さは予想を超えていた。マスクをかぶる捕手田辺に不安がよぎる。どこまで抑えられるのか。エース有迫は左手の中指に血マメができ、本調子ではなかった。
不安は序盤から的中する。制球が定まらない。横浜打線にきわどいボール球を見極められ、苦しいカウントからストライクを取りにいく直球を外野にはじき返された。
中軸打者にはコーナーを突き、四球で歩かせてもいい。下位打線を内野ゴロに打ち取る。試合前のそんな作戦も、切れ目のない横浜打線には通じなかった。「相手が一枚上手でした」
打席でも、先取点を奪われた直後の2回裏、1死二、三塁で内野フライを打ち上げてしまった。直球を狙っていたが、真ん中に入ってきた変化球に思わず手が出て打ち損じた。
「先輩に連れてきてもらった決勝で、自分の仕事ができなかった」。試合後、田辺はそう言ってうなだれた。
田辺は清峰の先発の中で唯一の2年生。身長170センチと大きくはないが、送球と捕球のセンスを買われ、昨年秋から正捕手に定着した。
甲子園に来てからは、正捕手の座を争う3年の内山から毎試合後にアドバイスをもらった。
バッテリーを組む有迫も「試合ごとにリードが良くなっている」と、要求通りの球を投げ込んできてくれた。
しかし、結果は完敗。「守備でも打撃でも力をつけて、またここに来ます」。田辺は夏に向かって雪辱を誓った。
(敬称略)