 |
4回裏、守備陣に声をかける白川捕手 |
9回裏、2死満塁でサヨナラ負けの絶体絶命のピンチ。この日、無安打に抑えていた関西の4番打者を前に、バッテリーは心を一つにした。スライダーを3球続けた後、白川英聖(ひでまさ)捕手がエース斎藤佑樹投手に要求したのは、内角まっすぐ。「あいつが投げるなら、絶対打たれない」と信頼する決め球だ。
狙いは的中。背後にはるか高く上がった球は、白川君のミットに収まりゲームセット。勝利を確かめるように、ミットを高らかと掲げた。
「昨日は最後の詰めが甘かった」。昨夜は、再試合にもつれ込んだその試合を、斎藤君と2人でビデオで見直した。「しっかり詰めれば抑えられる」。関西打線は低めの球に合っていなかった。
斎藤君の球数は前日から数えると300球を超えていた。いつもよりリードに悩んだという白川君。「さすがに球威は落ちていた。でも、緩急で逃げてやる」。そう決めた。「攻めろ、守るな」という和泉実監督の指示通り、最後までバッテリーは強気で関西打線に向かった。
投手から捕手に転向したのは、昨年6月。捕手出身の和泉監督から「声が大きくて、肩が強い」と指名された。11月の明治神宮大会では斎藤君のワンバウンドのスライダーを捕逸することもあったが、冬場、距離を近めにしたマシーンでブロックの自主練習を積んだ。「僕が球をそらしたら、斎藤に申し訳ない」。そんな気持ちが強い。
「投げるのはあくまでもピッチャー。斎藤が投げるイメージを崩したくない」。投手が投げたい球ならば、必ず受け止める自信がある。