甲子園で57年ぶりの連覇を達成してから1週間。駒大苫小牧高の指導者による暴力問題に27日、「連帯責任は問わない」という結論がくだされた。学校による報告の遅れにも厳しい対応が示されたが、優勝は取り消されず、選手たちの偉業が大会史から消えることはなかった。
「高校野球を心底愛するファンの失望を買い、深くおわびします」
午後8時20分。大阪市西区の日本高野連で開かれた会見の冒頭、駒大苫小牧高の篠原勝昌校長は胸の前で手を合わせて頭を下げ、涙を浮かべながら言った。
並んで座った香田誉士史(よしふみ)監督は「野球部の最高指揮官である私の責任。(暴力を受けた部員の)心に傷を負わせ、大変申し訳ない」と謝罪した。
校長が今回の問題を知ったのは8月8日。部員の父親からの電話だった。
香田監督に伝わったのは翌9日。初戦は2日後に迫っていた。香田監督は「正直驚いた。流れがつかめず、どうなっていくのかと思った」と、当時の心境を振り返った。
その後、同校は連覇を目指し、快進撃を続けた。篠原校長は「針のむしろに座らされている心境だった」と言葉を詰まらせた。
「優勝旗を返還したいと申し出たか」と報道陣から問われると、篠原校長は「当初から、その考えは毛頭なかった」と言い切った。一方でこの日、優勝が取り消されないことが決まった時の心境については、「正直、涙がこみあげた」と本音を明かした。
香田監督も「今回のことは選手に関係のないこと。(選手たちに)優勝か優勝でないかという不安を抱かせたのは深く反省している」と話した。
こうした暴力問題が起きた背景を問われると、香田監督はしばらく黙った後に言った。「家族ぐるみで部長と付き合っていた。普段から(暴力は)いけないと話をしていた。私の指導が足りなかった」。消え入るような声だった。
これに先立ち、大会本部の役員が会見を開いた。大会本部委員長の田仲拓二・朝日新聞大阪本社編集局長は「57年ぶりの連覇を成し遂げた選手たちに改めて敬意を表したい」と話した。
同校の優勝の取り扱いについて論議した臨時運営委員会では、「責任教師の野球部長が暴力をふるった責任はきわめて重い」などの指摘があったという。
田仲大会本部委員長は、「今回の問題には、大会に出場した駒大苫小牧の選手は1人も関与していない。全会一致で優勝の見直しをしないことを決めた」とした。
脇村春夫・日本高野連会長は、大会前に発覚した明徳義塾(高知)の不祥事にも触れ、「問題が起きた時にはすぐに報告してほしい」と厳しい表情で訴えた。