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【小野太郎】やり残したことがある――。第95回全国高校野球選手権記念大会に2年連続で出場した佐世保実の選手たちは、その思いを胸に甲子園のグラウンドに立った。結果は初戦敗退だったが、この1年の成長ぶりを存分に発揮した。
長崎代表のページはこちら昨夏、甲子園の2回戦で途中登板した木下愛投手(3年)は、3回を投げ被安打10の7失点。左翼を守った酒井堅也選手(同)は打球処理を誤り、相手にランニング本塁打を献上した。敗戦後に清水央彦監督から言い放たれた「今日の試合は2年生がだめにした」という言葉。新チームはそこからスタートした。
島原農、長崎商、諫早、海星、長崎日大。長崎大会で対戦した相手はいずれも強豪校や注目校だったが、スコア以上に充実した内容で勝ち進んだ。木下投手、山口晃投手(同)の二枚看板は県内一の投手力と言われた。それを支えたのが堅い守り。長崎大会5試合で3失策でも、清水監督が渋い表情を見せるほどのこだわりぶりだった。
打撃も力を増した。「死にものぐるい」でやらないとついて行けない、冬場の厳しい走り込みや振り込みの練習が実を結んだ。チームは5試合で58安打、打率3割5分以上の成績を残し、甲子園に乗り込んだ。
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ところが、12日の樟南(鹿児島)戦はスコアボードにゼロが並ぶ予想外の展開だった。序盤、制球が落ち着かない樟南のエース山下敦大投手(同)から四球を選び、単打も絡めたが、なかなか連打が出ない。打線は次第に球を捉え始めたが、山下投手も尻上がりに調子を上げた。主将の佐々原拓海選手(同)が「1点取らなければと打ち急いだ」と話すように、技巧派左腕の変化球の前に6、7、8回は無安打に抑えられた。