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初球を左越え本塁打し、右手を突き上げ二塁を回る藤沢君=大田 |
試合開始のサイレンがまだ鳴りやまぬ間に、日体荏原の先頭打者・藤沢孝年君が放った打球は、鮮やかな弧を描いて左翼席に飛び込んでいった。
初球、来たのはど真ん中に近い直球だった。練習試合を入れても、先頭打者で本塁打を打ったのは初めて。ましてや初球だ。狙っていたとはいえ、自分でも信じられないぐらい、あっという間の1点。人さし指を天に突き出し、クルクル回して喜びを表した。
チームの切り込み役の藤沢君だが、春先、極端に打撃の調子を落とした。テストで赤点を取ってしまい、練習に出られなかったからだ。
心配したのが、元高校球児でもある父・恭一さん(43)。チームの練習の後、夕方、毎日のようにトスを上げてもらったり、24時間営業のバッティングセンターにつきあってもらったりした。
試合の前日も、親子でバッティングセンターに向かい、2時間みっちり打ち込んだ。「きょうは打っていけ」。父の助言どおりに結果を出した。
試合は気の抜けない展開が続いた。日体荏原は6回に1点を入れ2点差としたが、7回、守備の乱れなどをつかれ、農大一に同点に追いつかれた。それでも7回途中から登板した片桐祐貴投手が8回、適時打を放って1点勝ち越し。接戦を制した。
「追いつかれても、ぜったいに追い返してみせる」。そんな藤沢君の思いは通じた。終わってみれば、自身の初球本塁打が効いていた。
試合後、記念のホームランボールを受け取った藤沢君。「いますぐお父さんにプレゼントしたい。すごく心配してくれたから」と、にっこり笑った。=大田