集大成の3連続バント 「スモール」徹した日本が悲願 U18W杯
スモールベースボールに徹した先に世界一が待っていた。
台北で開催された野球の第31回U18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)は10日の決勝で高校日本代表が台湾を破って初優勝を果たした。
夏の全国選手権に出場した選手を含めた高校日本代表として初めて出場した第21回大会(2004年)以降、8回目の出場で悲願を遂げた。
四回1死一、三塁から高中一樹(聖光学院)のスクイズに敵失が絡んで逆転し、エース前田悠伍(大阪桐蔭)が地元・台湾を相手に7回1失点で完投した。
日本は計9試合で52得点、11失点と投打の歯車がかみ合った。
打率5割7分1厘(決勝を除いた計8試合)で首位打者、最多得点(10)のタイトルを獲得した緒方漣(横浜)が最優秀選手に選ばれた。
ベストナインにあたるオール・ワールド・チームには先発で東恩納蒼(あおい、沖縄尚学)、二塁手で緒方が入った。
大会は世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催し、12の国・地域が参加した。
■「やってもいいですか」
1点を追う四回、先頭の緒方が四球を選んだ。ここからが真骨頂だ。
4番武田陸玖(りく、山形中央)の犠打で1死二塁。打席に向かう5番丸田湊斗(慶応)は馬淵史郎監督に確認した。
「やってもいいですか」
絶妙のタイミングでバットを寝かせて一塁線へ転がし、内野安打とした。「あれが大きかった」と監督。
一、三塁から高中が「何が何でも決める」と転がしたスクイズが三塁手の悪送球を誘い、逆転した。
前回大会で3位に終わった馬淵監督には一貫した戦略があった。
今春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で強打を前面に日本が優勝した後、こんなことを言った。
「プロとは別物。参考にならない。日本の高校生は他国に比べて守備やバントなどの野球の基本ができている。生かさない手はない」
8月の選手選考に鮮明に表れた。
内野は強肩で守備範囲が広い遊撃手タイプをそろえた。外野の3人は自チームでは1番を打つ俊足の選手で固めた。
「もっと長打力のある選手を」との声はあったが、昨年の経験から短期間で木製バットに適応するのは難しく、球威のある海外の投手から簡単に長打を打てないことを織り込んでいた。
センスの高い選手たちはつないで1点をもぎとるスモールベースボールに順応していった。
決勝ラウンドまでの50得点は参加チーム中2位で、12犠打は最多だった。
決勝での3連続バントは集大成だった。(室田賢)
■「私が監督だとそれしかできない」
馬淵監督(日) 「感無量です。スモールベースボールを掲げて、やり遂げてよかった。いろんなやり方があると思うけど、私が監督だとそれしかできないので」
前田(日) 7回1失点で完投。「いい経験をさせてもらったので、生かすのは自分次第。日々の練習から高い意識でいきたい」
緒方(日) 首位打者などのタイトルを獲得し、最優秀選手に。「選手全員が9試合を戦い抜いた勲章が、ただ自分に来ただけ」
丸田(日) 甲子園での全国選手権に続く優勝に、「日本一と世界一を取れたのは僕だけなので、最高の経験をさせてもらって本当に幸せものです」。
東恩納(日) 前田と並ぶ先発の柱は計3試合、11回を投げ被安打1、無失点。「やるべきことをやろうと臨んで、結果が残せて良かった」