コロナ禍で幻となった「あの夏」 元球児らが11月に甲子園で大会
新型コロナウイルスの感染拡大で、2020年の全国高校野球選手権大会は戦後初めて中止された。あれから3年。当時の球児たちが阪神甲子園球場に集い、11月29日に手作りの「甲子園大会」を開くことになった。夢の舞台を失った「あの夏」の悔しさを晴らそうと、有志がプロジェクトを計画していた。
元球児たちのプロジェクトは「あの夏を取り戻せ 全国元高校球児野球大会実行委員会」。発起人の一人、武蔵野大(東京都江東区)3年の大武優斗さん(20)らが18日、同大で会見を開き、明らかにした。
大武さんは夏の甲子園に出場経験のある城西(東京都豊島区)の元硬式野球部員で、20年夏の選手権大会が中止になったときの世代。昨夏から「あの夏を取り戻せ」と銘打ち、SNSで賛同者を募り、プロジェクトの実現をめざしてきた。
20年夏、各都道府県大会の代わりに開かれた独自大会の優勝校などに声をかけてきた。11月29日の本番には、全国から46チーム約1千人の元球児が甲子園球場に集まる予定だ。
全チームが試合をすることは難しいため、当日はセレモニーやチームごとの練習、記念撮影をするほか、特別記念試合を開く予定だ。翌30日と12月1日に兵庫県内の複数の球場で1チーム1試合ずつ交流試合をする。
約1千人の参加者の交通費と甲子園球場利用費、運営費などに約7千万円かかると見込む。大武さんらは6月7日からクラウドファンディングで募る。
大武さんは会見で「悔しい気持ちに終止符を打ち、失ったものを取り戻したい」と話した。会見に出席した敦賀気比(福井県)の元球児、宮階宣全さん(20)も「全国の同世代の元球児たちの思いを背負って、人生に一つ区切りを付けたい」と意気込みを語った。
会見には元ヤクルトで野球解説者の古田敦也さんも応援に駆けつけ、「若い人たちが自分たちの手で成し遂げる、やる気と勢いと熱を感じた。大人の立場として応援したい」と語った。(大滝哲彰)