「上には上がいる」 東海大菅生エース日當、78球の悔しさを糧に
(29日、第95回記念選抜野球大会準々決勝 大阪桐蔭6―1東京・東海大菅生)
「自分のせいで負けてしまった」。試合後の三塁側ベンチ。東海大菅生のエース日當(ひなた)直喜(3年)の目には、涙が浮かんでいた。
大阪桐蔭戦の前夜、上田崇監督に先発を直訴した。その日にあった沖縄尚学戦で119球を投げており、連投になる。前半は小刻みな継投でしのぎ、後半で日當につなぐ――。上田監督は、そんな考えだった。
ただ、そのプランが早くも崩れる。三回。この回から登板した2番手の島袋俐輝(りき)(同)がつかまった。先頭に四球を与え、直後に3連打を浴びて2失点。その後、無死満塁となり、ブルペンで投球練習をしていた日當に、急きょ出番が回ってきた。「俺に任せろ」。だが勢いを止められなかった。
五回には、自分の中では決して失投ではない球をバックスクリーンに運ばれた。6回2失点。「思うように投げさせてくれなかった」と振り返った。
「エースになって菅生を日本一にする」。そう決意して、東海大菅生に入った。入学当初の球速は128キロ程度。このままではだめだと、野球への取り組み方を意識から変えた。
この冬は一回の食事で1キロの米を食べ、プロテインも飲んだ。体重は10キロ近く増えて105キロに。球速は最速150キロまでアップした。すべては「負けない投手になる」ためだった。
上には上がいる。そう思い知らされた78球だった。「もっと経験を積んで、どんな場面でも、リリーフでも、打たれない投手になりたい。レベルアップして、もっともっと強くなりたい」。この負けを、この悔しさを、夏に生かす。(野田枝里子)