選手の良き兄貴分、春夏甲子園経験のOBが指導 作新学院
【栃木】作新学院は29日の第1試合、準々決勝で昨年秋の関東大会王者・山梨学院と対戦する。チームを支える指導者のなかには、小針崇宏監督のもとで春夏の甲子園を経験してきた若いOBのコーチもいる。選手たちの良き兄貴分として監督や部長らとの橋渡し役も担っている。
作新学院のグラウンドの外野フェンス際。卒業生の水沼和希さん(28)が、選手と会話をしながらランニングをしていた。2012年に春夏の甲子園に投手として出場し、大学野球でも活躍。福冨竜世投手(新3年)は「いろいろとアドバイスをいただいている。体重移動を教えてもらったときは、一番しっくりきた」と信頼を寄せる。
水沼さんは大学4年のときに地元に戻ってくることを決め、「後輩たちの力になれるのであれば」と外部指導者を引き受けた。
平日は本業の宇都宮市職員として勤務。休日の土日にグラウンドに来る。昨年結婚したばかりで公私とも多忙な時期だが、「たまに来るだけでは選手にも失礼」とほぼ毎週末、無償でコーチを引き受けている。
経験を生かして主に投手陣をみる。小針監督は「選手一人ひとりの長所を見いだして伸ばす彼の存在は大きく、すごく助かっている」という。
自分の高校時代から10年がすぎた。「昔の練習着は上下とも白一色でみんな同じ格好をしていたが、今はカラフルで個性的になった」というが、「野球以外の面も大切にする気持ちは変わっていない」。
水沼さんが甲子園に出場したときも、継投で複数の投手が競い合っており、「今のチームと似ているかもしれないですね」。水沼さんはエースナンバーでなく、二けたの背番号で活躍した経験から「背番号は関係ない。自分から見えないですからね。マウンドに上がったらエースなんだという気持ちで投げてほしい」と期待する。
現役選手に口をすっぱくして言い続けているのが「高校野球は常に時間との勝負」ということだ。「今、この瞬間も終わりが近づいている。新3年生はあと半年。高校野球はおかわりができない。今しかできないぞ、ということを伝えたい」
自身は高校野球を悔いなくやりきった。現役選手も後悔のないようにプレーしてくれることを願う。(津布楽洋一)