父と兄が見た選抜Vの景色を 東邦の石川主将は追いかけ、次の目標へ
(28日、第95回記念選抜高校野球大会3回戦 兵庫・報徳学園5―4愛知・東邦)
春の「TOHO」優勝。東邦(愛知)の先輩だった父や兄が見た景色を、石川瑛貴(てるき)主将(3年)はずっと追いかけてきた。
8強入りをかけた報徳学園(兵庫)戦は、序盤は劣勢に。だが、守備陣が再三の好プレーを見せ、終盤に同点に追いついた。
タイブレークの十回、チームは力尽きた。石川主将は「重く受け止めず、楽しくやろうとやってきたが、悔しい」。
父の尋貴(ひろたか)さん(51)はベンチ入りはできなかったが、山田喜久夫投手を擁して1989年の選抜大会を制した時の部員。兄の昂弥(たかや)選手(現中日)は2019年に春の頂点に立った際のエースで主将だった。
石川主将は今大会3試合すべてで4番を務め、12打数5安打。報徳学園戦は1安打で、打点には絡めなかった。肩の状態が万全ではなかったが、主将として仲間を鼓舞し続けた。「キャプテンシー(統率力)だけは(兄に)負けない」。そんな強い思いがあった。
尋貴さんは「中学では足首のひどい骨折もあり、体が万全なら弟のほうが兄よりずっと力はある。僕としては東邦で、主将で、甲子園に出てくれただけで本当に奇跡。これまで何回、やめてもいいんだよと伝えたか」と振り返る。
親子3人で歩んできた。昨秋の東海地区大会準決勝の前日。昂弥選手から石川主将に電話があった。「でも僕寝ちゃってて、そしたらLINEで『早寝はいいことだ』って。気にかけてくれるのは力になる」と石川主将は笑った。秋の試合では、昂弥選手の高校時代の応援歌を使った。
石川主将は「(甲子園は)楽しかった。全国から来るピッチャーを積極的に打っていった。そこがよかった」と振り返る。次の目標は兄が果たせなかった3年夏の甲子園出場だ。(土井良典、良永うめか)