「ヌートバーみたいに」 投攻守で沸かせた東邦・岡本が語った夢
(28日、第95回記念選抜高校野球大会3回戦 兵庫・報徳学園5―4愛知・東邦)
タイブレークで迎えた十回裏。マウンドには、昨秋から東邦の屋台骨となって活躍してきた岡本昇磨選手(3年)がいた。
1死満塁。1ボールからの2球目。「思い切り投げ込め」と捕手の指示を受け、投げ込んだ135キロの直球がはじき返された。
「詰まったな」。打たれた直後の安心感は一瞬にして消えた。詰まったために、ボールは右翼手の前に落ちた。「落ちると思った。これで終わったと思った。悔しい」。ベンチ前の整列で涙は見せなかった。
守って、打って、投げて。最後の場面は力尽きたが、十分な仕事はした。
2点を追う四回は好機で中前安打を放ち、チーム初得点を挙げた。六回からは右翼手から継投のマウンドに立った。
九回まで0を並べた。東邦が3得点で同点に追いついた七回は先頭で二塁打を放ち、反撃の口火を切った。
大会3試合で計6安打はチームトップだった。
守りでも沸かせた。二回2死、右前安打を好返球し、2点目を狙った二塁走者を本塁で刺した。「これで乗れた」と言う。「チームに流れを引き戻そう」。終始、気迫が光った。
中学では、第93回大会で4強だった中京大中京のエース畔柳(くろやなぎ)亨丞投手(現・日本ハム)のいた硬式チームでプレーした。恩師によると、技術は未熟だったが、「使えばあれよあれよと結果を出す」タイプだった。東邦では技術も身につけてきた。
今大会前、盛り上がっていたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を見て思った。「(日本代表で活躍した)ヌートバー選手みたいに、勝負強い打撃をして、ぎりぎりの打球を好捕してみたい」。この日は敗れたものの、語った夢を甲子園でしっかりとかなえてみせた。(土井良典)