能代松陽・柴田が逸した好機、感じた「大きな差」 夏のリベンジ誓う
(28日、第95回記念選抜高校野球大会3回戦 能代松陽0―1大阪桐蔭)
0―0で迎えた七回裏、1死三塁のピンチ。
マウンドに駆けよった能代松陽の柴田大翔捕手(3年)は、エースの胸をたたいてこう言った。「大丈夫だぞ。思いっきり来いよ」。その直後、スクイズを決められ、決勝点を奪われた。「大阪桐蔭との大きな差を感じた1点だった」
昨夏の甲子園は出番がなかった。マスクをかぶったのは、チームの中心選手だった当時の主将。その先輩だけでなく、下級生ながら活躍する同級生の姿もベンチから見守った。「悔しかったけど、次は自分が背番号2をつけてこの場所に戻ってくる」と誓った。
中学時代は内野手。肩の強さをかわれて高校で捕手に転向した。自分たちの代になると、監督から「このチームはお前がキーマンだ」と言われた。
「キーマンっていうのは、『お前がチームの弱点だぞ』っていうこと。昨夏からレギュラーだった同級生たちよりも、自分は実力も経験も劣っているから」
練習中は、わざとバウンドする球を投げてもらい、ボールを止める練習を重ねた。繰り返し本を読み、配球を勉強した。「先輩なら、ここでこんな声かけをしただろうな」と思い出し、練習中も投手や内野手への声かけを続けた。
自分は目立たなくていい。陰でチームを支える存在になりたいと思った。
だけど、寝る前にはやっぱり考えた。大観衆の前で盗塁を刺してガッツポーズでベンチに戻る自分の姿。ホームランを打ってゆっくりと本塁まで1周する姿。
「常に自分が甲子園で活躍している場面をイメージしてから寝ています」
初戦は被安打2の完封勝利に貢献し、昨年の王者とも接戦を演じた。躍動するエースをもり立てたが、後悔が残るという。
この日、ベンチ前に整列すると、1死二、三塁の好機に見逃し三振した七回表の打席を思い出して号泣した。「チャンスで打てなかった。チャンスにバットを振れず、チームを負けさせてしまった」
試合後、目を赤くしたままの背番号2は報道陣に囲まれた。「悔しい」と繰り返し、こう続けた。「自分の気持ちが弱かった。夏は日本一のバッテリーになって、大阪桐蔭にリベンジしたい」(北上田剛)