宿舎のテレビ、同級生がまぶしかった 海星エースが甲子園で得た宿題
(27日、第95回記念選抜高校野球大会3回戦 広島・広陵3―2長崎・海星)
2点リードで迎えた五回。海星の左腕のエース、吉田翔選手(3年)は7番打者に痛恨の三塁打を浴びた。アウトコースを狙った直球が真ん中高めに浮き、打球は右中間へ。打たれた瞬間、「失投だ」と悟った。次打者の犠飛で1点を返された。リードは守ったものの、流れは広陵へと傾き始めた。
それまでは強打の相手を散発2安打に抑える入魂のピッチング。チェンジアップとカーブを織り交ぜて緩急をつけ、相手に的を絞らせなかった。だが、1球たりとも気を抜けないマウンドで体力を消耗。直球のスピードが落ちてしまった。
六回、再び三塁打を浴び同点に。七回には集中打を許した。逆転され、マウンドを高野颯波(そな)選手(3年)に譲った。
ロースコアでの惜敗に、「悔しいけれど、強打者相手に自分のピッチングは貫けた」と振り返る。
16強入りした昨夏もベンチ入りした。だが、初戦突破後のPCR検査で無症状ではあるがコロナ陽性に。チームは公共交通機関を使わず、長時間のバス移動で甲子園入りするなど対策を講じてきた。それだけに「なぜ」と落ち込んだ。
第2、第3戦は宿舎のテレビで観戦した。先輩たちに交じってプレーする同級生たちがまぶしかった。「必ず戻ってくる」。親の車で長崎に戻る途中、心の中で誓った。
舞い戻った甲子園。初戦は立ち上がりの制球に苦しんだ。珍しく四つの四球を与えた。それでも1失点に抑え、自分を見失わなかった。「自分の変化球が甲子園で通用することが分かった」と吉田選手は言う。
課題は直球のスピードアップだ。最速131キロを、135キロまで伸ばしたい。あこがれのマウンドで得た「宿題」を持ち帰り、夏に3度目の聖地をめざす。(三沢敦)