「後は俺に任せろ」　専大松戸エース平野、冬に磨いた変化球が自信に

　（27日、第95回記念選抜高校野球大会3回戦　千葉・専大松戸6―4高知）

　試合開始早々、2失点。今大会注目の右腕、専大松戸の平野大地が出ばなをくじかれた。

　一回、先頭に四球を許し、次打者に左前に運ばれた。守備の乱れから先取点を与えると、5番打者には左中間適時二塁打を浴びた。許した安打はいずれもまっすぐ。最速151キロを誇る直球の制球に苦しみ、そこを狙われた。「流れを悪くしてしまった」

　ズルズル崩れてもおかしくない場面。だが、焦りはなかった。「勝つために甲子園に来た。打ち取るために最善を尽くした」。二回から変化球主体の投球に切り替える。切れのあるスライダーやカーブなどでバットの芯を外す。二回を5球で片付けると、この日のリズムをつかんだ。

　力で押していく投球が、平野の基本スタイルだった。しかし、今大会はそれだけではない姿を見せている。「これまではカウントが悪くなった時、どうしても直球で行くしかないところをとらえられていた」

　この冬は変化球を課題とし、新たにフォークを習得したほか、それぞれの球種の精度もさらに磨いた。積み重ねてきた努力からくる自信が、直球にこだわらない柔軟さへとつながっている。

　八回に同点にされたが、直後にチームが勝ち越すとギアが上がった。「1点あれば抑えられると思って、後は俺に任せろって気持ちだった」。終盤は直球の勢いも取り戻し、終わってみれば9奪三振で2戦連続の完投。高知の浜口佳久監督に「平野君の方が、うちの打線より一つも二つも上だった」と言わしめた。

　専大松戸として選抜、全国選手権を通じて初の8強入りに導いた。「この甲子園で僅差（きんさ）の試合ができるのは、すごく楽しかった」。重圧のかかるマウンドが、エースをさらに大きくしている。（平田瑛美）