流れを作ったバント安打、私も亡き尾藤監督から学んだ 高嶋仁の目
■智弁和歌山前監督 高嶋仁の目
(27日、第95回記念選抜高校野球大会3回戦 千葉・専大松戸6―4高知)
これはうまかったですね。
4―4の八回裏、先頭打者の専大松戸・宮尾日向(ひゅうが)選手のドラッグバント。投手と一塁手の間に強めに転がし、うまいこと二塁手の前に球がいった。
このバント、宮尾選手はかなり練習していたのではないでしょうか。同点に追いつかれた直後だけに、大きかった。
このバント安打が流れを作り、好機が広がって、専大松戸に決勝点が入りました。
この左打者のドラッグバント、右打者のプッシュバントがうまかったのが、かつての箕島高校(和歌山)でした。
ウチ(智弁和歌山)とは定期戦をやらせてもらいまして、尾藤公(ただし)監督(故人)から学びました。
投手と一塁手の間に円を描いて、その円の中に打球が止まるよう狙って、バント練習をしたそうです。
このバントに対する守りの練習もします。声を掛け合って、一塁手が捕ったら、投手はすぐに一塁ベースカバーにダッシュするといったやり方です。
自分から尾藤さんを質問攻めにして聞き出したものです(笑)
専大松戸のエース平野大地投手は、調子は良くなかったと思うんです。
ただ、四苦八苦しながらも緩いカーブ、スライダーでカウントを稼いで辛抱強く投げました。八回も長打を打たれましたが、同点止まりで抑えたのが大きかったですね。
高知の粘りも素晴らしかった。八回2死から3番高塚涼丞(りょうすけ)選手、4番山平統己(とき)選手の連続二塁打で追いつきました。
ただ、次の打者の5番門野結大(ゆうと)選手が初球のスライダーを見逃してしまったのは、もったいなかった。
その前の2人の連続二塁打はいずれも直球を打ったものです。初球、まず直球では入ってきません。そこを狙ってほしかったですね。
振り返れば、両チームともミスが多かったですね。失策数は高知が三つ、専大松戸は二つですが、バント失敗でファウルになったり、牽制(けんせい)で刺されたり。記録に表れないミスもありました。
野球はミスのスポーツですが、接戦ではミスが少ない方が勝ちます。
まだ春先で、どのチームもあまり出来上がっていない印象です。しっかり仕上げて、夏にも出てきてほしいですね。(前・智弁和歌山監督)