好機で初球打ちは甲子園の定石 東邦と高松商の勝つ姿勢 高嶋仁の目
■智弁和歌山前監督 高嶋仁の目
(25日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 愛知・東邦6―3香川・高松商)
東邦、高松商とも各打者が積極的にバットを振っていきました。春先はどうしても投手戦が多くなり、今大会も活発な打撃戦はここまで見られませんでしたが、この試合は実際の得点以上に迫力がありました。
まずは高松商です。二回、先頭の5番・村山由空(ゆう)選手が初球からどんどんバットを振っていきました。内野安打で出塁すると、2死三塁から大室亮満(りょうま)選手の中前適時打で先取点をあげました。こちらも初球からファウルを3球打ったあと、4球目の変化球をとらえました。
第1ストライクを振らないというのは、準備ができていないからだと、ぼくは思うんです。高校生の野球です。プロではないんですから、やっぱり向かっていくチームが強いです。バットは振らないと、ボールに当たりませんからね。
東邦も負けていません。四回、1死から大島善也選手が右前安打で出塁し、盗塁と悪送球で三塁まで進みました。ここで3番真辺麗生(れお)、4番石川瑛貴(てるき)両選手の三塁線を破る連続長打で逆転しました。2人ともストライクは1球も見逃しませんでした。
チャンスでは初球からいく。これも甲子園戦法です。
東邦は五回以降も小刻みに加点しました。六回は先頭の石川選手が初球で凡退しましたが、5番の岡本昇磨選手も臆せず初球から打っていきました。そして、ファウルの後の2球目をライトスタンドに打ち込みました。
東邦のこの積極性を生み出したのは、山田祐輔監督の采配だと、ぼくは思います。二回、1死三塁からスクイズをしかけました。失敗に終わりましたが、「監督は点を取りにいっているんだ」と選手に明確に伝わったと思います。「よし、打って点を取りにいこう」と選手を前向きにさせました。
高松商も積極性では負けていませんでした。七回には2点を返し、最後まで食い下がりました。
さすが、両校とも甲子園で勝ち上がる経験をしているチームです。選手がバットを思いきり振っていて、見ていて気持ちがよかったです。
ぼくは智弁和歌山の監督時代、そういうバッティングをしてもらいたいと、選手にいつも話しとりました。(前・智弁和歌山監督)