七回まで無安打でも高知に焦りなし 逆転打の高塚「投手陣に感謝」
(24日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 高知3―2大阪・履正社)
七回まで無安打。でも、高知ベンチの雰囲気は悪くなかった。「もともとあんまり打てないんで」と3番の高塚涼丞(りょうすけ)。八回に1点リードされても「よく1点で抑えた」と選手に焦りはなかったという。
その裏、一塁ランナーコーチを務めていた井上聡太が先頭で代打に。バットを指2本分短く持って振り切ると、右前に落ちた。ムードメーカーの初安打に高知のベンチは一気に盛り上がった。
四球ふたつが加わり、2死満塁とした。高塚が左打席に立つ。「大舞台でこんなチャンスはめったにない。いい経験ができる」。興奮しながらも、頭の中は冷静だった。「(相手投手は)ストライクが入ってない。塁に出れば1点入る」。押し出し四球の可能性も考えたという。
カウント2―2まで一度もバットを振らず、追い込まれた。5球目。捕手は外角低めに構えたが、まっすぐが内角寄りに入ってきた。「肩口からの変化球を待っていたから、インコースに反応できた」。やや詰まったが、追いすがる二塁手のグラブの先を抜け、中堅へ転がる逆転2点適時打。「投手陣ががんばってくれた。感謝している」。早め早めの継投で強打の履正社打線を2点に抑えた3投手に報いる一打となった。
浜口佳久監督は前日、「出場チームでいちばん弱いと思っている」と話した。だが、終わってみればわずか2安打でも勝った。「相手のほうが能力は非常に高い。でも、野球っていうのは能力だけじゃない。守り勝つという野球を目指してやってきた」。点が入りにくい軟式野球で高知中を4度全国優勝に導いた指導者らしい信念だ。
昨年の選抜は2回戦で敗れ、8強を逃した。「目標は8強以上」と高塚。今年は記念大会で出場校が多く、1回戦から登場の高知は2勝してようやく16強入り。あと1勝して、先輩たちを超える。(酒瀬川亮介)
○浜口佳久監督(高) 2安打で勝利。「勝つとすれば接戦に持ち込んでひっついていく展開。後半ワンチャンスで逆転してくれて、みんないい働きだった」