狙い球は選手が決める 報徳学園の一人ひとりが養った冷静な分析力
(24日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 兵庫・報徳学園7―2群馬・健大高崎)
相手の先発右腕、小玉湧斗(ゆうと)の球は荒れていた。武器の直球の抑えが利かず、高めへと浮いた。
1点を追う二回、報徳学園は3連続押し出し四球を選んで逆転。ただ、リードはまだ2点しかない。加点していくために、どの球を狙えばいいか。
大角健二監督は細かい指示は出していない。「振り回さず、甘い球に絞ってセンターへ」と伝えただけだ。
主将の堀柊那(しゅうな)は自分で決めた。「低めというより、高めの意識。的を絞って、決め球を狙う」と。
四回、追加点の好機が来た。2死一、二塁。堀は右打席でバットをあらかじめ後ろへ引いて構えた。小玉の直球は最速で140キロ台半ば。力がある。「バットを最短で出す」
高めの141キロ直球に負けず、コンパクトに振り抜くと、打球は右前へ抜けた。1点を加えた。
堀は仲間に、同じ球を狙うよう伝えてはいない。だが、多くの選手が堀と似た球を待った。
この回1死から追加点の足がかりとなる中前安打を放った盛田智矢も、計2安打を放った竹内颯平も、高めの真っすぐを狙い澄ました。
甘く来た球を打つ練習が報徳学園にはある。打撃用マシンから出す直球をやや高めに設定し、それを上からしっかりたたく。
平凡な飛球に倒れないためにどうすればいいか。選手一人ひとりが工夫して打つ。
四回、小玉が本来の制球力を取り戻しつつあったタイミングで、その練習が生きた。「『どこを振らない』とすると(スイングが)中途半端になってしまう」と大角監督は言う。
報徳学園は捕手の堀を中心に攻守のレベルが高い。
相手投手の状態から狙い球をはじき出す――。非凡な分析力も、大いなる強みだ。(山田佳毅)
○大角健二監督(報) 「(先発の)盛田は制球が定まらず探り探りの投球だったが、試合をまとめてくれた。次は彼らしい投球をしてもらいたい」