城東主将は新しい打撃用グローブで打席へ、甲子園たたれた兄がくれた
選抜大会の21世紀枠で初めて甲子園の土を踏む城東(徳島市)は、文武両道で知られる創立120年の進学校だ。捕手で主将の森本凱斗(かいと)さん(3年)は22日、真新しい白のバッティンググローブをはめて打席に立つ。甲子園に届かなかった三つ上の兄からの出場祝いだ。
兄の夢叶(ゆうと)さん(20)は、城東の二塁手として活躍。チームは2019年秋、初出場した秋季四国地区大会で1勝をあげた。翌年春の選抜大会の21世紀枠の四国地区の候補校に選ばれ、選抜出場の期待が高まった。だが、選考されなかった。
その後、感染が広がった新型コロナウイルスの影響で春夏の甲子園は中止され、夢は断たれた。
凱斗さんは、小学1年生から兄の背中を追いかけて野球を続けてきた。少年野球チームで全国大会に出場した兄の誇らしい顔は今も鮮明に覚えている。
あこがれであり、何でも気軽にアドバイスしてくれる存在。兄のチームが21世紀枠で選ばれなかったときは、「ショックだったはずだ」と胸が痛んだ。
凱斗さんは兄の卒業と入れ替わる形で城東に入学した。野球と勉強の両立に取り組んだ兄に続きたかったからだ。肩の強さが認められ、1年秋から捕手としてレギュラーの座をつかんだ。
凱斗さんのチームは、兄の頃にはなかった練習を取り入れた。内野ほどの広さしかない学校のグラウンドを最大限生かすため、2チームに分かれて犠打や盗塁で得点を競う「バントゲーム」だ。他校に比べて劣る練習環境を工夫で克服し、機動力野球を磨いた。
チームは昨秋の県大会で4強入り。2度目の21世紀枠の四国地区候補校に選ばれ、今年1月、甲子園出場が決まった。
大阪体育大学で野球を続ける兄からはLINEで「よかったな。甲子園でしっかりプレーしてこいよ」とメッセージが届いた。
凱斗さんが主将として率いるチームは、出場36校中最少の選手12人とマネジャー1人の計13人だ。「兄の分までしっかりプレーし、少人数のチームでも甲子園で野球ができることを全国の人たちに見せたい」
凱斗さんは夢の大舞台を全力で駆け回る。(吉田博行)