能代松陽の森岡、球威落ちず無四球12K完封 昨夏は5失点で悔し涙
(21日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 秋田・能代松陽3―0栃木・石橋)
両校とも、守り勝つのがチームカラーだ。ロースコアの試合が予想された公立対決は、能代松陽が一回に1点を先取した。
この日の森岡大智に、援護はそれで十分だった。
きれいな回転の球が、打者のベルトより下にズバッと決まる。2者連続三振の滑り出し。捕手の柴田大翔は「球がきれていて100%の状態だ」と思った。
184センチから投げ下ろす直球は最速140キロ超。縦に落ちるスライダーも有効だった。許したのは内野安打の2本だけ。最後は12個目の三振に仕留め、マウンドで右の拳を握った。今大会の初完封。「素直にうれしかった」
昨夏の甲子園も背番号18で出場した。1回戦に2番手で投げ、4回5失点。試合に敗れ、悔し涙を流した。新チームになって託された背番号1。フォームを安定させようと鏡の前でシャドーピッチングを繰り返した。
「(球数を)減らして投げることを意識してきた」。昨秋は球がばらつき、完投できても球数がかかっていたという。だからこの日、三振数より誇ったのが無四球だ。3ボールになったのも2度だけ。完封に要したのは117球だった。
昨年12月には、チームで栄養学の専門家の講話を聞き、補食の重要さも知った。練習の合間におにぎりやカステラを食べて増量し、下半身の安定感が増したことで、球威は最後まで落ちなかった。
学校のある秋田県能代市は日本海に面し、12月初旬から積雪でグラウンドが使えない。冬場は農業用ハウス(16×60メートル)を練習場に、工夫して鍛えてきた。
「公立の星になろう」を合言葉に乗り込んできた。「秋田も盛り上がってくれていると思う」と森岡。自身の成長と、2013年に能代商と能代北が統合して開校した能代松陽になってからの甲子園初勝利を刻んだ。(安藤仙一朗)
○工藤明監督(能) 「ロースコアの試合になると思っていた。3カ月間、雪の中で辛抱強く練習した成果が出た。(初出場勝利は)やっぱりうれしい」