出塁からわずか6球で生還 海星の田中、勝負勘はレーサーの父譲り
(20日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 長崎・海星5―1兵庫・社)
塁上で、父譲りの勝負勘が光る。
一回、海星の1番打者・田中朔太郎は遊撃への内野安打で出塁、犠打で二塁に進んだ。3番・永田晃庄(こうしょう)への初球だった。投球が投手の手を離れた瞬間に「ワンバウンドする」と判断し、スタートを切った。
弾んだ球はわずかに転がっただけだったが、捕手が拾ったときにはもう三塁へ滑り込んでいた(記録は暴投)。
2球後、永田の浅い左飛でためらうことなく本塁へ。内野安打で出塁してからわずか6球。瞬く間に先制点をもたらした。
父・茂さん(46)はバイクで着順を競うオートレースのレーサーだ。福岡・飯塚オートレース場の所属で、日本選手権、スーパースター王座決定戦などのタイトルを獲得してきた。
そんな父を幼い頃から応援してきた。
「思わぬところで勝負を仕掛けるんです。自分も見習わないとと思った」
父はバイクで1周500メートルのコースを疾走する。自分は足でダイヤモンドを駆け回る。
「生後10カ月で歩き出した」(茂さん)という脚力には自信がある。50メートルは6秒1だ。
強豪の海星に進み、走塁技術にさらに磨きをかけた。反射神経や瞬発力を鍛えようと、全体練習前には複数のライトがランダムに光る機械と向き合い、光った方向に即座に体を動かす練習を欠かさない。
昨秋の公式戦では4盗塁を決め、この日は三回にも二盗に成功した。加藤慶二監督からは盗塁は好きなときにしていいと指示されている。
まだ2年生。初の甲子園にも、「緊張はしたけど、ワクワク感のほうがすごかった」。
父譲りの勝負勘と自慢のスピードで次戦もチームを勢いづけたい。(藤田絢子、大坂尚子)