大分商、常に追う展開でも気持ちは一つ 九回に猛追、強豪苦しめた
(19日、第95回記念選抜高校野球大会2回戦 大分商6―8作新学院)
終盤に入り、一球の行方に集中する選手たちの息づかいが聞こえてきそうな攻防が続く七回表。
「絶対に点を取ろうという気持ちだけで打った。あまり覚えていない」。3番大道蓮主将は、好機で迎えた自身の打席をそう振り返った。
四球や犠打に続いてフライ性のあたりが野手の間に落ちて1点を返し、なお1死一、三塁。長打が出れば一挙同点の場面だった。
1球目は外れてボール。2球目、無心に左方向へはじき返した打球は適時打となり、1点差に迫った。歓声が甲子園に響き渡る。
次の4番羽田野颯未一塁手も四球を選んでつなぎ、1死満塁。だが、後続が邪飛と三振に打ち取られた。
この日は序盤の二回に一挙4点を奪われた。1点差にまで迫った直後の七回裏、1死から3連打を浴び、今度は3点を奪われた。点をもぎ取っても突き放される。常に追う展開が続いた。
だが選手たちは気持ちを一つにして次を見据えていた。大道主将は、序盤の思わぬ失点にも、一点ずつかえしていけば活路は見いだせると思っていた。だから、「つないでいこうと声をかけていた」。
四回にあげた1点は、羽田野選手が粘って四球を選び、5番江口飛勇右翼手の安打と、6番丸尾櫂人左翼手の併殺打の間にかえってもぎ取った。六回も、先頭の2番豊田顕三塁手から単打を四つつなげて1点をかえした。
点差がまた4点に広がった九回も猛追した。1死から四死球と4番羽田野選手、5番江口選手の連打で2点差に迫った。走塁のミスで思わぬ幕切れとなったが、粘り強さを存分に発揮し、最後まで春夏通算27回出場の強豪を苦しめた。
試合後、選手たちが口にしたのは、春の舞台で確かめた成長。そして「夏」へ向けた新たな誓いだった。
大道主将は「自分たちの持ち味の元気の良さと気力で競った試合ができた。昨秋に比べ打撃力も上がり、総合的にレベルアップしたと感じた試合だった」と語った。そして続けた。「この負けを、夏につなげていきたい」(奥正光)