鳥取城北、エースの自信 降板の提案にも「マウンド譲りたくない」
(19日、第95回記念選抜高校野球大会1回戦 東邦6―3鳥取城北)
七回表、鳥取城北のエース新庄空(そら)投手(3年)が先頭打者に安打を許す。主将で捕手の河西華槻(はづき)選手(同)がマウンドに駆け寄った。
「外野行ってもいいで」
河西選手は、いったん降板して守備に回る選択肢を示した。兵庫県での中学時代からバッテリーを組む2人。この日の新庄投手は直球が走っていたが、序盤から決め球のフォークの精度を欠き、抜ける場面が目立っていた。
チームは前の回に3点を返して1点差とし、勢いづいている。この場面での失点は、引き寄せつつある流れを失いかねない。だが、新庄投手は「背番号1を背負わせてもらっている。自信もあったし、マウンドを譲りたくなかった」と続投を決めた。
2死までこぎつけたが適時打を浴び、点差は2点に開いた。チームはこの後、追加点を奪えずゲームセット。「あの1点が自分には一番重かった」と新庄投手は残念がった。
似たような場面を昨夏も経験していた。4番手で登板した全国選手権鳥取大会の2回戦・倉吉北戦。延長十一回に先頭打者を四球で出し、適時打でサヨナラ負け。優勝候補だったチームは初戦で敗退した。
苦い記憶をバネに昨秋の中国大会で好投し、4強の立役者となった。冬の間も直球を磨き、チェンジアップの習得に努めるなど、一回り大きくなって臨んだ大舞台。チームの勝ちにはつながらなかったが、東邦の主力打者を威力ある直球でたびたび詰まらせた。大林仁監督も「きょうは百点。よく投げてくれた」とねぎらった。
「マウンドで、怖がることなく投げることができた」。夏に向け、エースは最後に収穫を口にした。(清野貴幸)
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●大林仁監督 「守りのミスが目立ってペースをつかめなかった。揺さぶられてもしっかり守りきれるチームを、もう一回作り直したい」