やっとつかんだ履正社の背番号1 「心を折らずに」母の言葉が支えに
「やっともらえた。本当にうれしい」
2月中旬の履正社のグラウンド。選抜大会に向けたメンバー発表で、左腕の福田幸之介投手(3年)は多田晃監督から「背番号1」を渡すと告げられた。背番号1はエースの証。福田投手は喜びをかみしめた。
層の厚い履正社の投手陣。福田選手のほかにも、これまで背番号1をつけてきたマウンド経験豊富な左腕の増田壮投手(3年)、速球派右腕の今仲巧投手(3年)ら左右の好投手がそろう。
3投手は入学直後からエースの座をめぐって切磋琢磨(せっさたくま)し、実力を高め合ってきた。
ただ、増田、今仲の両投手が1年生の夏の大阪府大会からベンチ入りしたのに対し、福田投手がベンチ入りしたのは1年生の秋からだった。「何で俺だけ入れへんのやろ」と思い悩んだ。
なかでも、同じ左腕の増田投手は「負けたくない」と思えるライバル。また、同じ大阪府内には全国屈指の好投手、大阪桐蔭の前田悠伍投手(3年)もいる。「何とかして勝ちたいと、まわりの左ピッチャーと自分をいつも比べていた」という。
焦る気持ちは空回りした。
昨夏の大阪府大会では肩を痛め、ベンチ入りしたもののサポート役に徹した。ライバルたちがマウンドで活躍する姿は頼もしかったが、「内心は苦しかった」。
そんな時、母寿子さん(43)の言葉が支えになった。
「心を折らずに今頑張れたら、けがが治った後にもっと頑張れる」
けがを治し、新チームで挑んだ昨秋の近畿大会では、準優勝した報徳学園(兵庫)に試合終盤、直球を痛打され敗れた。
「エースになるためには、今まで以上に頑張らないといけない」。この冬は強い体と体力作りのため、「誰よりもトレーニングに励んだ」。自信を付けたかった。
結果は徐々に出てきた。
最速140キロ台前半だった直球は、2月に目標の145キロを記録。3月中旬の練習試合では147キロが出た。
ケガを乗り越え苦しい練習に耐えた分、自信は深まった。
福田投手が思い描く履正社のエースとは、「他のピッチャーとはひと味違う圧倒的な投球をする存在」だ。
甲子園に向けて万全の準備をしてきた。「まだまだ足りない部分が多いですが、成長した強気の真っすぐを見てほしい」
新しいエースがマウンドでの活躍を誓った。(岡純太郎)