内海哲也投手を超えられるか 敦賀気比エース、入学の縁は郷土料理店
第95回記念選抜高校野球大会に出場する敦賀気比(福井)は20日の初戦で、昨年優勝した大阪桐蔭に挑む。エースナンバーを背負うのは辻晶太投手(3年)。三重出身ながら、実家と離れた港町の学校を選んだのは、思いがけない場所で、「ある人」と出会ったことがきっかけだった。
辻選手は最速139キロの直球とカーブ、スライダー、ツーシームの3種を駆使する技巧派だ。昨秋からエースを務め、その自負も芽生えている。「大事な場面で打たれても、投げきれる投手にならないと通用しない」
三重で学童野球のチームに所属していたが、小学生だった2015年の夏に転機が訪れた。家族旅行で福井へ出掛け、途中である店に立ち寄った。
「酒楽屋 うつ海(み)」。
敦賀市の本町2丁目商店街にある郷土料理店だ。敦賀気比OBで、プロ野球・巨人などで活躍した内海哲也さんがプロデュースしている。
店長の中山国久さん(40)は内海さんの同級生。高校時代は背番号1をめぐって切磋琢磨(せっさたくま)した元投手だ。
辻選手の父は大の巨人ファン。店のことは知っていた。辻選手も「(内海さんは)試合に出たら絶対勝つと思われるエース」と憧れていた。
「野球やってるんか」。
店内のサインやユニホームに辻選手が見入っていると、別のテーブルにいたお客が声をかけてきた。敦賀気比の監督やコーチが、たまたま居合わせていた。
敦賀気比はその年、選抜大会に優勝していた。辻選手は興奮し、野球のことを熱く語り合った。そして、コーチの一人にこう言われた。「気比に来いや」。6年後、進学先になった。
昨秋の北信越大会準決勝では、松商学園(長野)相手に完封勝ち。選抜出場の牽引(けんいん)役になった。
「うちの店でそんなことが起きていたとは。敦賀気比に来てくれて本当にうれしい」。内海さんと辻選手という、新旧のエースの奇妙な縁を店長の中山さんは喜んだ。
「テツ(内海さん)のように努力を継続できる人になって、いつかテツを超えてほしい」(マハール有仁州)