つながった21世紀枠の縁 選抜出場校・石橋、神戸で練習試合に感謝
約630キロの距離を越えて、新しい縁ができた。
3月15日。神戸市長田区にある長田高校のグラウンドに球音が響いた。3月18日に開幕する第95回選抜高校野球大会に21世紀枠で初出場する石橋(栃木)が訪れ、2016年の第88回大会の21世紀枠出場校、長田と練習試合を戦った。
両校はこれまで、付き合いがあったわけではない。
石橋は県立校で、生徒の多くが国公立大への進学を希望する。それでいて野球部は関東大会の出場経験もあり、明秀日立(茨城)や木更津総合(千葉)など関東の強豪私学とも練習試合を組む。だが、関西遠征の経験はなかった。
福田博之監督は「関西入りして3月15日ごろ、練習試合をしたいんだけど……。平日だし、関西につてはないし」と悩んでいた。
甲子園常連校は、3月に関西入りしてからも練習試合をして調整する。冬場は沖縄や鹿児島などでキャンプを張る学校もある。
石橋は部費も少なく、2、3月は試験もあって学校で練習だった。
そんな事情を伝え聞いた長田が試合を引き受け、グラウンドも練習用に開放してくれた。
長田も県立校で、多くの生徒が国公立大や難関とされる私大を目指す。部員は勉強と野球を両立させ、グラウンドは他部と共用。くしくも両校のスローガンは「文武不岐」だ。
永井伸哉監督は「うちも甲子園に出た時は慣れないことが多かった。何かお役に立てることがあればと。うちは甲子園では勝てなかったので、石橋さんには全国の進学校の代表として、ぜひ1勝してほしい」と話し、「私も筑波大の出身。ここで縁ができたので、機会があれば関東に遠征して交流できればと思います」。
主将の藤本航平は「進学校でも甲子園に出られる。勉強が大変だから野球が弱い、練習がつらいから勉強ができないという言い訳はできないなと改めて感じました」と刺激を受けていた。
試合は5―2で石橋が勝ったが、中盤以降は長田が食い下がった。
石橋もピンチの連続をしのぎ、いい実戦の機会となった。エース藤巻翔汰は「関西に来てまさか試合ができるとは。いい相手とできてありがたかった」と感謝していた。
思いがけずつながった21世紀枠同士の縁。「がんばれー」。試合後、グラウンドを出る石橋の選手たちを、長田の選手たちが「花道」を作り、拍手で見送った。(編集委員・稲崎航一)