九回にドラマ 選抜21世紀枠 明暗分かれた2校が対戦 氷見と木本
18日に開幕が迫った第95回記念選抜高校野球大会(日本高校野球連盟、毎日新聞社主催、朝日新聞社後援)に21世紀枠で出場する氷見(富山)と、21世紀枠の選考に漏れた木本(きのもと、三重)が、練習試合で対戦した。
試合があったのは12日で、会場は岐阜市の市立岐阜商グラウンド。市立岐阜商と木本はこれまでも交流があり、対戦が組まれていた。そこに、岐阜遠征を予定していた氷見の村井実監督が「ぜひ、うちも交ぜてほしい」と呼びかけた。
氷見の選手は17人、木本は13人。富山県氷見市と三重県熊野市というともに漁業が盛んな地域で、少ない人数で白球を追いかけてきた。
試合は白熱した。
一回裏、木本が榎本和真主将(3年)の適時打などで4点を先制した。すると、氷見は四回、エースで4番青野拓海選手(3年)の適時打などで4―4に追いついた。
氷見は六~九回に毎回得点し計8点を挙げ、12―5とリードして九回裏を迎えた。
しかし、木本はあきらめない。5連打など打者一巡の猛攻で5得点。2点差に迫ってなお1死満塁と一打逆転の好機をつくった。だが、最後は併殺打に打ち取られた。
最後の打者となった木本の選手は一塁に砂ぼこりをあげてヘッドスライディング。「逆転じゃい」「ええよ、ええよ」「もっと攻めろ」。そんな言葉が飛び交う、大熱戦だった。中越えの特大本塁打を放った木本の3番久保尊捕手(3年)は「富山で1位のチームだし、楽しみというか、倒したるというのはあった。打者の2巡目からの適応力がよくてさすがだと思った」と話す。
木本は体調不良やけがで、ただでさえ少ない選手が2人欠け、11人で臨んだ。三塁、二塁、右翼には普段は守り慣れていない選手がついた。
木本は21世紀枠の選考に漏れた後、「自力で甲子園に行く」とチームはすでに前しか向いていない。野球ノートを導入し、チーム内で毎日、練習で感じたことを交代でまとめている。
榎本主将も久保捕手も高校進学にあたり、他地域の高校から誘いもあった。それでも地元から一緒に甲子園に行こうと木本を選んだ。「夢を見させてくれてありがとう」。2人は周囲からそんなエールをもらっているという。
同じ21世紀枠候補だった氷見に対し、榎本主将は「僕らの悔しい思いもあるし、甲子園で暴れてもらえたら。勝ってもらったら人数の少ない学校の希望にもなる」と期待を込める。
氷見にも木本の思いは伝わる。青野選手は「(21世紀枠候補)9校中3校に絞られた中から氷見が選ばれた。(選ばれなかった)6校の分も背負い、しっかり戦いたい」。
氷見は大会6日目の2回戦で、東北(宮城)―山梨学院の勝者と対戦する。(土井良典)