増える中学生の女子野球チーム 東京都内では自治体も普及を後押し
女子野球の裾野が広がっている。小学校で男子と一緒にプレーしていても、中学校に進むとチームがなく、あきらめるケースがかつては少なくなかった。東京都内では近年、各地に女子チームが誕生。そんな盛り上がりを後押しする自治体も出てきた。
「内野、ゲッツー!」
コーチのノックを受けた遊撃手から二塁、一塁へと鋭い球が送られる。
祝日の2月23日、東京都府中市郷土の森第一野球場で「府中ピンクパンサーズ」が練習に汗を流していた。中学生女子のクラブチームで、市内と近隣から選手が集まる。
市内には、昨夏で15回を数えた学童女子軟式野球交流大会がある。この大会に参加するために集まった小6の女子たちが「中学でも、このメンバーで楽しく野球がやりたい」と希望し、親たちの尽力もあって、2010年に誕生した。
結成時、都内に中学女子のクラブチームは数チームだったが、その後、23区内も含めて増えていった。活況を背景に、15年には都知事杯の都女子中学軟式野球大会「エリエールトーナメント」が始まる。その後、夏に京都で開かれる全国大会の都代表を決める大会となり、昨年は16チームが出場した。
ピンクパンサーズの代表でチーム創設に携わった佐藤大太さん(57)は「チームができた初期は男子チームと練習試合をしたりしたが、今は都内に多くの対戦相手がいる。恵まれた環境になった」。監督の西村秀信さん(49)も「教えることがどんどん高度になり、女子野球のレベルアップを実感している」と話す。
キャプテンの虫賀晴世さん(14)は小1から野球を始めた。「野球をやるのは私の日常で、中学でやめるなんて考えられなかった」と振り返る。新チームは昨年12月、東京中学生野球選手権大会女子新人戦の部で優勝。チームの悲願であるエリエールトーナメント初優勝に向け、好発進した。
■市民球場のトイレ、男女別にするため改修へ
地元の府中市も、女子野球を通じた地域活性化に取り組み始めた。昨年5月、全日本女子野球連盟から、都内で初めて「女子野球タウン」に認定された。普及活動などのため、女子チームが始動した読売巨人軍と協働協定を結んだほか、市民球場の改修費約1億6千万円を2023年度予算案に盛り込んだ。男女兼用しかないトイレを男女別に分けるなど、女性も使いやすい球場に変えていくという。
高野律雄市長は「夏の甲子園で女子高校野球の決勝が行われたり、プロ野球の球団が女子チームを持つようになったりする時代。市としても、振興に取り組むべき時期と思っている」と話している。