けがを乗り越え練習復帰 「打撃で輝きたい」 海星の松尾君
昨年11月。海星(長崎市)の松尾文斗君(2年)は練習試合前のシートノックで下半身に激痛を感じた。開脚した際に足を滑らせ、左尻の肉離れを引き起こしたのだ。
2カ月ほど戦列から離れた。上半身を鍛え、体幹トレーニングに黙々と励む日々。復帰したのは年を越してから。棒に振った冬を取り戻そうと今、必死だ。「実戦的な練習が増え、徐々に感覚が戻ってきています」と話す。
物心がついたときから白球を追いかけていた。野球は「考えるスポーツ」。相手との駆け引きが面白い。「甲子園で勝てる学校に行きたい」。波佐見中を卒業すると、迷わず海星に進んだ。自分の長所は選球眼と打撃での対応力。そう思っている。
5番・左翼手として出場した昨年10月の九州大会。1、2戦は打てなかった。沖縄尚学とぶつかった準決勝。大会屈指の好投手、東恩納蒼(ひがしおんなあおい)君(2年)から2長短打を放った。チームは計11安打を東恩納君に浴びせて試合をリード。六回途中でマウンドから引きずり下ろすことにも成功した。九回にサヨナラ負けを喫したが、手応えを感じていた。
4強入りして選抜切符を引き寄せ、「さあこれからだ」と気合を入れた矢先の故障。「この先どうなるのかと精神的につらかった」と振り返る。
親元離れての寮生活。実家のように気ままには過ごせない。へとへとになって戻っても、汚れた衣類の洗濯が待っている。集団行動の規律も守らないといけない。
そんな中での息抜きは、ユーチューバーが配信するアウトドアキャンプの動画を視聴すること。家族と暮らしていた頃、よくキャンプやバーベキューをした。ぼーっと眺めていると心が和らぐ。「癒やされるんです」と松尾君は笑う。
16強入りした昨夏の甲子園。出番こそなかったが、控えの捕手としてベンチ入りした。グラウンドに立てないもどかしさを抱えながらも、先輩たちの「偉大なプレー」に大感激した。「次はおれたちが後輩に示す番」。心に誓った。
けがはかなり癒えてきた。調子も上がっている。大観衆が見つめる夢舞台。右翼席に特大のホームランを打ち込みたい。(三沢敦)