競技歴なし、異色の経歴もつ会長 女子野球の魅力にはまったきっかけ
女子野球の裾野を広げる活動を進めている全日本女子野球連盟の山田博子会長(51)。2020年にいまの役職に就いたが、実は異色の経歴の持ち主だ。
「私自身、競技経験はありません。勤めていたスポーツエージェント会社の仕事で、1996年の日米野球で来日した米メジャーリーガーの担当をしたのが野球との最初のかかわり。その後、2004年に富山県で開催された女子野球の国際大会で通訳を頼まれたことがきっかけで、女子野球のマネジメントの世界に入りました」
「練習を見学にいくと、当時は河川敷のグラウンドで虫に刺されながら練習をしている。女性用のトイレは設置されていないので、近くのコンビニに貸してもらえるよう自分たちで交渉している状態でした。でも悲観的にはならなかった。誰よりも選手たちが笑って楽しそうなんですよ。その魅力にはまっていきました」
■ハロウィーンにはベンチ飾りつけ 選手も仮装
女子野球のスタイルは男子とは大きく異なる。選手がベンチの中で踊ったり、選手名を書いた応援プラカードを掲げたりしている。
「相手への礼儀を忘れない、プレーへの支障がないことを前提に、自主性と楽しむことを大事にしています。もちろん勝負は真剣ですが、選手が歌って踊るのはもうカルチャーですね。男子の高校野球で指導、プレーしてきた人は最初驚かれます」
「クラブチームの大会でしたが、ハロウィーンの時期にあった試合ではベンチを全部飾り付けして、ボールパーソンにはカボチャのお化けをあしらったバケツ。試合開始までは選手たちも仮装しました」
「プレーする人、みる人が楽しいのが一番。実際に高校生の選手から、大会の閉会式の演出についてリクエストがありました。『サッカーW杯のように、ステージの上で優勝トロフィーを掲げたい。絶対に盛り上がります』って。今年から採用しようと思っています」
■女性監督も活躍
決勝が阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開催された昨夏の高校選手権大会では、準決勝に進出した四つの高校はいずれも監督が女性だった。
「大きな舞台で女性監督が活躍するのは素直にうれしい。多様性という観点では、高校で選手として活躍し、その後、心と体の性が異なるトランスジェンダーであることを公表したクラブチームの監督もいます」
「連盟に18人いる理事も、目標としていた半数の9人が女性になりました。今回選出された理事の中には、野球以外の競技出身で、JOC(日本オリンピック委員会)に所属した経験がある女性もいます」
「自分も理事就任時には『私なんか』と尻込みしたのですが、やってみると意識が変わり、学ぶことも多かった。ポジションが人を育てるというのは本当なんだなと感じます。引き上げる、というのは特にいまの女性には必要なことだと思っています」(聞き手・豊岡亮)