要望多かった甲子園でのベンチ入り増 枠の都合で泣く「2人」解消へ
夏の全国選手権大会でベンチに入れる登録選手が18人から20人に増えることが決まった。
けがや体調不良を訴えた選手をより交代しやすくなる。
選手の負担軽減や暑さ対策に関する取材をしていると、指導者から「メンバーを増やして欲しい」という声をよく聞いた。
大阪桐蔭を夏に4度、全国制覇に導いた西谷浩一監督(53)は「投球数制限のルールを設けるなら、ベンチ入り人数も増やしてもらえたら」と言っていた。
1週間に500球以内の投球数制限が導入されたのは2020年。枠が増えれば、より多くの投手を入れることが可能だ。登板する投手が増えれば1人あたりの投球数は減る。
日本高校野球連盟によると、19年に選手の障害予防などに関して各都道府県高野連と意見交換した際、すべての連盟がベンチ入りの「2人増」を希望したという。
新型コロナによる混乱もあって4年後になったが、実現した。
指導者の精神的な負担軽減にもつながる。
昨夏の49地方大会のうち46大会でベンチ入り選手は20人だった(南北の北海道と鳥取の3大会は18人)。ほとんどの代表校が、優勝して数日のうちに全国選手権のメンバーを18人に絞らなければいけなかった。
「2人を選ぶのがつらい」「もっと時間が欲しい」「優勝メンバーで戦いたい」。監督や部長からそんな悩みをよく聞いた。
西谷監督は「大阪大会を20人で戦って、甲子園では人数が減る。采配が難しい面もあった」とも言っていた。
もちろん、球児にとっても朗報だ。
昨夏、東北勢で初めて日本一になった仙台育英(宮城)は、大会初戦の鳥取商との2回戦でベンチ入り18人全員が出場した。試合後、須江航監督(39)は「この世代は入学からコロナに苦しんだ。どんな展開になっても全員使いたかった」と説明した。一昨年夏の全国王者、智弁和歌山も「全員野球」を掲げ、甲子園で18人全員を起用して頂点まで駆け上がった。
単純計算で今夏、甲子園でプレーする資格を得る選手は49代表で計98人、増える。
好不調やけがが理由の入れ替えはあるだろうが、夢の舞台を目の前に、枠が減るためにメンバーから外れる選手はいなくなる。(山口裕起)