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イチローさんに「やばい」と言わせた女子の強打者 高校卒業後の夢は

2022年11月24日11時00分

朝日新聞DIGITAL

 ■スポーツ好奇心

 3日、東京ドームで女子高校野球の選抜チームが元大リーガーのイチローさん率いる草野球チームとエキシビションマッチを行った。1―7で敗れたが、日米の野球界で活躍した松坂大輔さんも出場した一戦で、誰よりも輝いた選手がいた。力強い打撃でチーム唯一の得点をたたき出した女子選抜の3番、森崎杏(あん、京都・福知山成美高3年)。スターたちを本気にさせた女子高生って、どんな人だろう?

 快音とともに、1万6千人の観客からどよめきが起きた。

 一回1死一塁、女子選抜の攻撃。1ボールからイチローさんが投じた2球目だ。左打席の森崎が、内角低め128キロを思いきりよく振り抜くと、大飛球は右中間を破った。

 三塁へ滑り込み、両手を突き上げた。「こんな大勢の観客の中で野球をするなんて初めて。すごく気持ちよかった」

 この一打で、イチローさんの顔つきが変わった。「これはやばいな、と。めちゃめちゃ悔しかったですよ」。打順一回りは、直球だけで勝負する予定だったが、考えが変わった。

 スライダーやツーシームなど変化球も交えるようになった。次打者を遊ゴロ、最後は空振り三振に仕留めると、拳を握って喜びを表した。

 遊撃を守っていた松坂さんも、森崎について「すごい打球だった。想像していたよりも女子野球のレベルが高くて、びっくりしました」。

 名古屋市出身の森崎は、小学5年のころ、友達に誘われて野球を始めた。「親から、なんでもいいからスポーツをやってほしいと言われて。なんとなく始めました」。男子に混じって体を動かすうちに、「バットの芯に当たった時の感触が好き」と、野球にのめり込んだ。

 中学では地元の女子チームに所属。左投げ左打ちで本職は一塁手だが、肩の強さを買われて捕手をすることもあったという。

 高校は「練習環境がいいから」と、親元を離れて京都府福知山市へ。2人部屋で寮生活を送っている。

 高校通算本塁打は3本。ランニングホームランはなく、すべて柵越えだ。

 「パワーでは他の女子選手に負けない自信がある」と言う。背筋を鍛えるデッドリフトは120キロを持ち上げ、両翼90メートルの球場で100メートル近く飛ばしたこともある。

 イチローさんからも、ひそかに本塁打を狙っていたという。「だから、あの試合、じつは悔しさもあったんです」

 高校の女子選手の球速は速くても120キロほど。「(最速で130キロ台半ばの)イチローさんの速い球をしっかりとらえれば、反発でスタンドまで飛んでいくと思ったんです。ぜいたくかもしれませんが」と苦笑い。

 「でも、力んで少し体の開きが早くなってしまった」。反省も忘れなかった。

 試合後はイチローさんからサインをもらい、松坂さんともグータッチをした。「自分が信じたことをやり続けることの大切さを学んだ。一生忘れられない一日になりました」

 来春からは巨人の女子チームに所属する。

 野球の技術の向上だけでなく、女子野球を盛り上げたいという思いがあり、進路を決めた。「イチローさんや松坂さんの力を借りなくても、自分たちの力でお客さんを呼べるようになりたい」と夢を語る。

 大きな拍手に包まれた一戦を終え、改めて誓った。「いつか大勢の観客の前でホームランを打ちたい」。17歳。目を輝かせて、そう言った。(山口裕起)

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