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春と夏の王者の見事な好勝負 選抜決勝でもう一度見たい 高嶋仁の目

2022年11月21日16時59分

朝日新聞DIGITAL

 (21日、明治神宮野球大会・高校の部 準決勝 大阪桐蔭5―4仙台育英)

■智弁和歌山前監督 高嶋仁の目

 仙台育英と大阪桐蔭の準決勝は、実に見応えのある好勝負でした。さすが春の王者と夏の王者です。

 新チームになっても、両校が高校野球界をリードする存在だと感じました。

 大阪桐蔭で良くも悪くも目立ったのはエースの前田悠伍君です。

 一回1死から二塁打を打たれ、連続死球などで2死満塁として、先取点を奪われました。

 二回も先頭からの連続四死球でピンチを招き、2点目を与えてしまいます。

 本調子にはほど遠かった。

 思うようにストライクをとれず、イライラしながら投球しているように見えました。

 近畿大会の途中から調子を上げたと感じていましたが、また戻ってしまったようです。

 優勝した昨年のこの大会では、「ホンマに1年生か」と思うほど、完成された投球をしていました。

 相手を見下ろして投げるような余裕を感じたものです。

 最上級生(2年生)になって、さらに余裕が出てくるはずなのに、そんな感じがしない。

 調子そのものが悪いということもあるでしょうが、責任感から自分を追い込んでしまっている面もあるのではないでしょうか。

 下級生の時から活躍している選手には、よくあることです。

 智弁和歌山で思い出すのは、武内晋一(38)=元ヤクルト=です。

 1年夏から中心打者で甲子園ベスト4。2年の時は3番を打って春は準優勝、夏は全国制覇に貢献してくれました。

 ただ、3年生の年は春も夏も甲子園に出られませんでした。

 主将としてチームを引っ張ってくれましたが、責任感が強すぎて空回りした部分もあったようです。最後の夏前に調子を崩し、悩んでいる様子を見て、後悔したことを覚えています。

 「しもた。負担をかけすぎたか。副主将でノビノビやらせてあげたらよかった」と。

 前田君は絶対的なエースであり、新チームでは主将も任されました。

 西谷浩一監督が考えた末の結論ですから、それがベストだと思います。

 ただ、「自分がチームを引っ張ろう」「ええとこ出さなあかん」という気持ちが強すぎるようにも感じます。

 「自分のピッチングをすればいい」と楽な気持ちになれるといいんですが。

 そんな前田君を救ったのは仲間たちです。三回に1点を返し、六回に3点を奪って逆転しました。気持ちが揺れているエースをみんなで支えたのです。

 七、八回の前田君は肩の力が抜け、本来の投球を取り戻しました。得点がなによりの薬なんです。

 先頭で自ら二塁打を放った八回は、2死からの適時打で前田君を生還させてくれました。

 結果的にこの1点がききました。

 仙台育英の粘りも見事で、九回は試練のマウンドになりました。

 2点を失って1点差に詰めよられ、なお2死一塁。

 ここで相手6番にストレートを続けて安打を打たれ、一、二塁と一打同点の場面をつくられました。

 最後は変化球を2球続けて追い込み、ストレートで三振に切って試合終了となりましたが、反省の多いマウンドになったと思います。

 前の打者になぜ変化球を織り交ぜなかったのか。

 どうしたら、ここまで追い込まれずにすんだのか。

 結果的に161球も投げながら、西谷監督がなぜ自分を完投させたのか。

 仲間に助けられたことを忘れず、自分のよくなかった点を次に生かしてこそ、意味のあるマウンドになります。

 大阪桐蔭を相手に一歩も引かない好勝負を演じた仙台育英も素晴らしかったです。

 投手陣は豊富で、そのレベルも高い。打線も力があると感じました。夏の財産を、うまく秋に生かしているのではないでしょうか。

 大阪桐蔭も仙台育英も、ワクワクするようなバッテリーと打者の駆け引き、好勝負を見せてくれました。

 来年の選抜大会決勝で、もう一度見たい。

 そう思ってしまうほどの一戦でした。(前・智弁和歌山監督)

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