「史上最低」から東京一になった東海大菅生 寝るのを忘れた結束力
(13日、秋季東京都高校野球大会決勝、東海大菅生8―2二松学舎大付)
スター選手もいなければ、上級生がいた今夏に公式戦に出た選手もほとんどいない。ずっと「史上最低」と言われてきた。
7月31日。西東京大会決勝で敗れた夜、新チームの主将に指名された東海大菅生の渡部奏楽(そら)(2年)は、若林弘泰監督にこう宣言した。
「チームを変えます」
生活態度、ルール、一球への執念。練習でミスをしたらみんなで集まって納得するまで話し合った。「先輩たちと同じことをしても技術ではかなわない。それなら、思い切って違うことをやらないと」
1次予選を勝ち抜き、本大会が開幕する前にチーム力が落ちていると感じた時も、チームメートを集めて言った。「史上最弱のチームが最強に変わる最初の大会だ」と。
主将の言葉に、エースの日當(ひなた)直喜(2年)も応えた。
準決勝前夜には気持ちを一つにするために、日當が呼びかける形でみんなで頭をきれいにそった。連投となった決勝も力強い直球で押した。135球を投げ、9回2失点で完投。九回は1死満塁のピンチを背負ったが、最後は併殺に打ち取った。「自分の力だけでは抑えられなかった。仲間が守ってくれたから。いいチーム、最高のチームになった」。優勝の瞬間、寝るのを忘れるほど毎日話し合った捕手の北島蒼大(2年)と真っ先に抱き合い、喜びを分かち合った。
「史上最低」のチームが、「東京一」にたどり着いた。次の舞台は全国の強豪がそろう明治神宮大会だ。若林監督は「ここまでよく成長してくれた。全国大会は準々決勝からなので何とか三つ勝ちたい」と語った。(野田枝里子)