ドラフト待つ山田陽翔が見せた熱さと斎藤佑樹さんのクール 共通点は
■斎藤佑樹「未来へのメッセージ」滋賀・近江へ
エースで4番で主将。そんな肩書を背負う彼のことを「すごいなあ」と正直、尊敬していました。
今春の選抜でチームを準優勝に導き、夏の全国選手権で4強入りした近江(滋賀)の山田陽翔(はると)選手のことです。
銅メダルを獲得した9月のU18(18歳以下)ワールドカップでも高校日本代表の主将を務めた山田選手にとって、高校野球とはどんなものだったのか。今後の目標は?
上位での指名が予想されるドラフト会議を前に、取材しました。
まず、驚かされたのは多賀章仁監督(63)の言葉です。
山田選手の人柄について尋ねると、「彼の存在の大きさは計り知れなかった。プレーはもちろん、責任感や使命感も強い。私が彼の一番のファンでした」。
監督から信頼されていることをここまで口に出して言われる選手はなかなかいません。実際に本人に会ってみると、わかった気がしました。
マウンド上での気迫あふれる表情や三振を奪った後のガッツポーズについて、山田選手は「チームを鼓舞するためにあえてやっていました」と説明します。
「チームに迷惑をかけたくないから、けがには気をつけていました」とも。自分より、チームのことを第一に考えていたのです。
だから、周りも彼についていくのでしょう。
人なつっこく、おごった様子もまったくない。インタビューが終わってからも僕のところに近寄ってきて、僕の趣味のカメラについてあれこれと聞きます。
「どこの球団が練習が厳しいですか」とプロの世界について、質問までされました。
こちらも自然と笑顔になっていました。
僕は早稲田実時代、山田選手とは反対にマウンド上ではポーカーフェースを意識していました。
もともと感情の起伏が激しい性格なので、それが表に出るとチームメートに迷惑をかけると思ったからです。
やり方は違えど、「チームを勝たせるんだ」という思いは山田選手と同じでした。
ドラフト会議は20日です。山田選手は高校入学直後、多賀監督に「プロをめざして3年間がんばっていこう」と声をかけられ、その言葉が心の支えになったそうです。
目標の選手はフォークボールが代名詞のソフトバンク千賀滉大投手。山田投手もツーシームなどの決め球を持っており、「追い込んだ時に打者に与える絶望感というのが見ていて楽しいです」と言います。
恩師の言葉は、高校を卒業した後も大きいものです。プロの世界に進めば、壁にぶつかることもある。
僕はプロ入り後に落ち込んだ時は、早稲田実の和泉実監督(61)にしょっちゅう電話をしていました。
自分が悩んでいることが明確になり、声を聞くと落ち着くんです。高校野球は、原点に返れる場所だと思います。
山田選手はこの後、どんな選手に成長していくのか。僕も1人のファンとして、次のステージでの活躍が楽しみです。(斎藤佑樹)