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全国制覇の理由はデータ主義? 根性?斎藤佑樹さん、須江監督に会う

2022年9月21日07時30分

朝日新聞DIGITAL

 データに基づいた「合理性」と少しの「根性論」――。今夏の第104回全国高校野球選手権大会を東北勢として初めて制した仙台育英(宮城)は、両者がうまく融合していたように思います。

■斎藤佑樹「未来へのメッセージ」宮城・仙台育英へ

 実は大会前から気になっていたチームでした。細かく選手のデータをとり、その数値をもとにベンチ入りメンバーを選考するなど、ユニークなチーム作りをしていると聞いていたからです。

 全国制覇から約3週間が経つ9月中旬、須江航監督(39)にお会いしました。

 なぜ、データを重視するのか。監督はきっぱりと言いました。

 「一番は選手個々を伸ばすため。自分の長所や弱点を理解するためです」

 決して勝利のためだけではなく、あくまでも教育、育成が優先でした。

 収集するデータは、投手なら球速やストライク率、打者なら出塁率にスイングスピードなど、多岐にわたります。

 須江監督は、自らを「選手の迷いを消す調整役」と表現します。

 面談を頻繁に行い、チームとしてその選手に何を求めているかを伝えるそうです。求める数字、数値も示すことで、選手はより、自分がやるべきことがはっきりします。

 仙台育英のデータ活用とは、努力の方向性を定めてあげることなのです。

 納得のいく練習であれば、自然と身が入ります。僕もそうでした。

 試合ではどうでしょう。

 「普段着で甲子園に行って気づいたら優勝していた感じです」

 今夏の全国制覇を須江監督はそう振り返ります。

 いずれも140キロ超の速球を投げる左右の5投手を擁し、特定の誰かに頼ることなく全5試合で継投を駆使しました。失点は計11です。

 野手陣は計69安打のうち単打が実に53本。盗塁や犠打を絡めてつなぐ攻撃に徹し、47得点しました。

 遊撃手で活躍し、新チームの主将に就いた山田脩也選手(2年)も、1番打者だった橋本航河選手(同)も「自分たちの野球ができた」と口をそろえます。

 これが、選手と密にコミュニケーションをとりながら築き上げたデータ活用野球の集大成なのだと感じました。

 合理性を重視する印象が強い須江監督に、ぶつけたい質問がありました。

 「野球界でよく使われる我慢や根性という言葉をどう思いますか」

 「好きですよ、大好きです。根性、忍耐、情熱とか。最後の推進力を生むのは間違いなく根性や我慢ですよ。勝負ってそういうものでしょう」

 この言葉を聞いて、なんだかうれしくなりました。

 野球は失敗の多いスポーツです。不安がよぎる場面の連続です。

 夏の甲子園の決勝、プロでの初先発、昨年の引退試合での登板……。僕はどれも緊張しました。

 そんなときはやはり、精神的なタフさが求められるのです。

 この夏の仙台育英なら、5―4で競り勝った明秀日立(茨城)との3回戦でしょうか。

 須江監督がターニングポイントにあげた場面があります。2点を追う七回無死一、二塁、不調だった3番秋元響選手(3年)がファウル2球などで粘った末の7球目で四球を選びました。

 好機は広がり、逆転につながりました。焦りや重圧に耐えられなかったら、つかめなかった四球だと思います。

 合理主義と精神論は相いれないように思われがちです。須江監督はこうも言いました。

 「効率化とのバランスが大事。生徒に根性が大事な理由を説明できないといけないですね」

 血が通ったデータ野球とメンタルが生み出す最後の推進力。その幸福な融合の先に、全国の頂があったのだと思います。(斎藤佑樹)

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