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県高野連審判・荒波宏則さん 選抜で苦境、目指すは静岡大会決勝

2022年8月19日08時00分

朝日新聞DIGITAL

 熱戦が続く夏の甲子園。躍動する選手の傍らには、冷静沈着な審判団がいる。その姿を特別な思いで見つめる人がいる。静岡県高校野球連盟に所属する審判員、荒波宏則さん(44)=島田市職員。夢の舞台で得た経験を生かし、球児たちのひたむきなプレーを支える。

 甲子園には「魔物」がいるといわれる。でもまさか自分が出くわすとは思いもしなかった。県高野連から派遣された今年春の選抜大会。1回戦の敦賀気比―広陵戦で二塁塁審を務めた荒波さんは、微妙な判定に立ち会った。

 四回裏無死一塁から、広陵の打者がバントを試みた。ボールは一塁線をはさみ不規則にバウンドし、フェア地域で止まった。尾崎泰輔球審の判定はフェアだったが、荒波さんはファウルと手を広げた。これを見た一塁走者が走塁をやめたため、併殺がいったん成立した。

 しかし、広陵からのアピールで審判団が協議。塁審のジェスチャーがなければ一塁走者は二進していたと判断した。尾崎球審は「私たちの間違いでした。大変申し訳ありません」と誤審を認め謝罪した上で、1死二塁でプレーは再開された。

 「やってしまったなあと、あの瞬間は頭の中が真っ白でした」と振り返る荒波さん。試合後は落ち込んだが、尾崎さんは「めったにない経験をした。これをこれからの審判活動に生かせばいい」と励ましてくれた。救われた気がした。

 静岡に戻り、ミスの原因を自分で追究した。審判歴は20年以上に及ぶ。慣れや慢心はなかったか。録画した甲子園での試合も繰り返し見ながら考えた。結論は原点に戻ろうだった。

 絶対にボールから目を離さない。ジャッジのタイミング、グラウンドでの立ち位置、無駄のない動きを常に心がける。基本に忠実であるべきだと心に刻んだ。

 技術を磨くために審判講習会に通う回数も増やした。あとは実践あるのみ。週末になればひたすら近隣の高校に足を運び、野球部の紅白戦の審判を買って出た。

 迎えた静岡大会。三塁塁審で臨んだ準決勝第1試合は、大会初の継続試合となった。雨で2度の中断を経て試合は翌日に持ち越し。異例の展開に荒波さんは自分に言い聞かせた。「気持ちを切らせるな。集中、集中だ」

 静岡大会では5試合でジャッジをした。ノーミスだったが、2度の主審では緊張と猛暑で何度かふらつくような感覚に襲われた。だが、4カ月前の出来事の記憶がよみがえってきた。「ゲームを止めるな」――。自らを奮い立たせ、最後まで乗り切った。

 金谷高校時代は野球部で最後の夏は1回戦負け。選手としては遠かった舞台に立つことはできた。そこで得た経験と教訓を後進に引き継ぐのが自分の役目だと考える。いま心に抱くのは、未体験という静岡大会決勝での審判出場だ。「頂点を決める戦いに身を置いてみたい」。甲子園での思いを糧に、さらなる目標に挑む。(中村純)

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