敦賀気比・上加世田、4番エースの責任感 「仲間ともっと試合が…」
敦賀気比は16日、8強入りを目指し、聖光学院(福島)との3回戦に臨んだ。福井大会を含め7試合連続で2桁安打を放っていた強力打線は、聖光学院の2投手に6安打に抑えられ、1―8で敗れた。2大会連続の8強入りはかなわなかったが、スタンドから大きな拍手が送られた。
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16日、第104回全国高校野球選手権大会3回戦 聖光学院8―1敦賀気比
五回表、聖光学院の攻撃。三回途中に降板し、ライトについていた先発の上加世田頼希(3年)が、再びマウンドにのぼった。
「必死に投げよう」
相手は本塁打を含む2安打を許した3番打者。捕手の渡辺優斗(同)に「思い切って投げてこい」と声をかけられた。得意のスライダーで右飛に打ち取り、意地をみせた。
上加世田は1年秋からベンチ入りし、昨夏の甲子園では4番三塁手として活躍。昨秋からエースで4番、そして主将になった。
ただ、昨年の秋季県大会で、同校の県大会での連勝が29で止まった。その後、選抜大会出場にたどり着いたが、1回戦で広陵(広島)に大敗した。
秋、春、夏の県大会の全てで優勝、昨夏の甲子園でベスト8入りした1学年上の代と比べられ、「史上最弱世代」とも評された。
「上加世田に頼りっぱなしのチームでは甲子園で勝てない」(東哲平監督)として春の大会前に、主将交代が決まった。力不足を痛感し、悔しかったという。
敦賀気比の強さの一つは、活躍する選手ほど率先して練習に取り組むことだ。上加世田は1年の時から、そんな先輩を間近でみてきた。
「投打でレベルアップを図ろうと、練習の質も量もこだわった」。慣れ親しんだ投球フォームを一時、変えようと模索。下半身や体幹を同時に鍛える「ランジ」という筋トレは、練習のすき間時間をみつけて毎日取り組むようにした。
そして、今夏の福井大会前には「どの学校よりも練習してきた」と言えるほどに。福井大会では打率4割、防御率0・70と投打で成果をみせた。主将の重荷がとれ、「プレーに集中できた」と振り返る。
甲子園でも打撃は好調だった。1、2回戦で10打数4安打、4打点と4番の役割を果たした。
ただ、エースとしては1回戦は五回途中で降板。制球の良さが持ち味だが、2回戦は7四死球と荒れ、完投を逃した。この日も2回3分の2を投げて4失点。打撃も無安打に終わった。
それでも東監督は「甲子園では調子が上がらないなか、よく頑張ってくれた」とねぎらった。上加世田は「この仲間ともっと試合がしたかった」と唇をかんだ。(敬称略)(長屋護)