近江・山田の満塁弾、冷静な読みが生きた 仲間との成長感じる甲子園
(15日、第104回全国高校野球選手権大会3回戦 近江7-1海星)
打った瞬間、「おおっ」と声が出た。「いい角度に上がった。風に乗ってくれ」。近江の山田陽翔(はると)は思った。
1点リードの七回、2死満塁。エースで4番の主将が放った打球はグングン伸びて、そのまま左翼席へと吸い込まれた。「今までで一番と言っていいぐらい、うれしかった」。4強入りした昨夏、準優勝した今春に続き、チームを3季連続で甲子園ベスト8に導く満塁本塁打となった。
海星・宮原明弥(はるや)との好右腕対決。二回に先制点を許したが、マウンドで徐々にギアを上げる。五回に1点をリードすると、六回は相手打線を三者三振に。
七回は、不運な安打もあって1死一、二塁と攻め込まれた。冷静だ。「理想は併殺。変化球で芯を外そう」。右打ちの牧真測(まひろ)を、スライダー中心の配球で攻め込む。
1―2からの5球目。セットポジションに入り、2度、3度と二塁走者に視線を送った。「相手をじらした。ぼくも打者として、やられるといやなので」。ズバッと投げ込んだ外角低めの直球に、牧のバットは反応できない。これで2死。
代打の左打者柿本彩人には、外に沈むツーシームを続けた。空振り三振でピンチを脱すると、その裏にビッグイニングが待っていた。
勝負を決定づけた満塁本塁打も、冷静な分析から生まれている。「前の打席はスライダーで三振したので、同じ球で攻めてくるはず。そのスライダーが2球ボールになったので、直球にヤマを張った」
この一発は「投手・山田」をも救った。点差が広がった八、九回は背番号10の星野世那にマウンドを託した。無失点に抑えた星野を、「すごく成長している。今後も任せられると思った」と山田。
選抜では準決勝までの4試合を1人で投げた末、決勝で大阪桐蔭に大敗した。その大阪桐蔭と再戦するまで負けるわけにはいかない。山田と仲間たちは、甲子園で成長し続ける。(安藤嘉浩)