前進守備避けた国学院栃木、智弁和歌山への失点は想定内 高嶋仁の目
■智弁和歌山前監督 高嶋仁の目
(13日、全国高校野球選手権大会2回戦 国学院栃木5-3智弁和歌山)
国学院栃木が見事な野球で、前年覇者の智弁和歌山に快勝しました。
ぼくが注目したのは2―2で迎えた六回表の国学院栃木の守備です。安打と四球、送りバントで1死二、三塁とされても、内野陣は前進守備を敷きませんでした。結果的に二塁ゴロで勝ち越されましたが、この1点は想定内ということです。
その裏、先頭からの4連続長短打で2点を奪って逆転します。柄目(つかのめ)直人監督(39)が明確な作戦をたて、選手がしっかりそれに応える。素晴らしい戦いぶりでした。
五回までは3投手を小刻みにつなぎ、目先を変えて智弁和歌山打線に調子を出させませんでした。この試合が今大会初戦の智弁和歌山は、なかなかエンジンがかからない。そして、六回から満を持してエースの盛永(もりなが)智也君を投入するという投手起用も見事でした。
盛永君は安打を打たれながらも粘り強く投げました。1点リードの八回、無死一塁の場面では、相手の送りバントを鋭いダッシュでさばいて二塁へ送球。ダブルプレーでピンチの芽をつみました。エースとしての気迫を感じるプレーでした。
その裏、4番の平井悠馬君が左越え本塁打を放って点差を2点に広げたのも大きかった。高めに甘く入ってきた初球の変化球を逃しませんでした。4番打者としての役割をまっとうする一打でした。
国学院栃木とは、智弁和歌山の監督時代に2度、選抜で対戦しています。2000年の準々決勝は、柄目監督が1番センターで出場していた年でした。2度目は18年の3回戦で互いに監督として対戦しています。
どちらも智弁和歌山が勝たせてもらいましたので、柄目監督としては期するものがあったでしょう。素晴らしい勝利でした。おめでとうございます。
智弁和歌山は毎回のように走者を出しながら、ビッグイニングを作れませんでした。バントの失敗もあったし、チャンスで甘い変化球を見逃したりするシーンも見られました。あれではリズムに乗れません。
前年優勝校として深紅の大優勝旗を全員で返しに来るという第1の目標は達成しましたが、甲子園に出るからには上を目指さなければいけません。3年生はこの悔しさを次のステージに、下級生は秋に生かしてもらいたいです。(前・智弁和歌山監督)