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日大三、感極まった主将にほほえむ監督 離れた家族に感謝伝えたい

2022年8月9日22時00分

朝日新聞DIGITAL

 9日、全国高校野球選手権大会1回戦 日大三2―4聖光学院

 あこがれのユニホームを着て、あこがれの甲子園の打席に立つ。兵庫から東京に来たのは、すべてこの日のためだった。

 日大三が1点を追う七回、1死一、三塁。勝負どころの打席には、この日犠打を2回決めている主将の寒川忠(3年)がいた。

 「スクイズかな?」

 だが、ベンチの小倉全由監督のサインはヒッティング。「思い切っていけ」。監督の言葉を思い出し、バットを強く握りしめた。

 寒川は甲子園の地元、兵庫県出身。五つ上の兄・豪さんは、2017年夏に神戸国際大付(兵庫)で甲子園に出場している。

 しかし寒川が選んだのは東京の日大三だった。

 きっかけは、野球を始めたころに見た2011年夏の甲子園。優勝した日大三の選手たちのあきらめない姿や、スタンドも一体となった全員野球が強く印象に残った。「高校野球は三高しか考えられない」。そう思うようになった。

 遠い土地への進学に、両親は難色を示した。説得してくれたのは豪さんだった。「一生懸命やると言っているんだから、やらしてやってほしい」。20年に日大三野球部に入り、昨夏の大会後は主将になった。

 新チームは当初まとまりを欠き、寒川の指示も行き渡らない。指導者と選手たちとの間で板挟みの日々が続く。

 すると、寒川の苦しさを感じた同級生たちが次第に声を出してくれるようになった。昨秋の都大会準決勝ではコールド負けを喫したものの、逆にその悔しさがチームを一つにした。厳しい冬の強化練習を乗り越え、春の都大会も4強入り。第1シードとして迎えた最後の夏は安定した戦いで西東京大会を制した。

 そして、甲子園。試合は1点を争う緊迫した展開となった。七回、寒川はサイン通り思いきりバットを振った。鋭い金属音とともに、悲鳴と歓声が入り交じったどよめきが起きた。

 間髪入れずして、さらに大きなどよめきが起きる。

 打球は一、二塁間を抜けるかと思われたが、一塁手が飛びついて好捕した。後続も断たれ、日大三はその後も得点できず敗れた。

 試合を終えた寒川は笑顔で仲間の肩をたたいた。3年生には「やりきった。悔いはない」。後輩には「次こそ甲子園で勝ってくれ」と声をかけた。

 ただ、試合後のインタビューの時は嗚咽(おえつ)を漏らした。仲間たちと支え合った3年間を思いだし、感極まってしまった。

 そんな寒川の隣で、小倉監督はほほえんでいた。「いつも自分の一番近くにいて、一番よくやってくれた。七回は紙一重の差でアウトになったけど、いいバッティングだった」。寒川もすぐに笑顔を取り戻した。「監督さんの下で主将をさせてもらい、野球も人間性も成長できた。一生の財産です」

 この日の試合を見守ってくれた家族にはこう伝えるつもりだ。三高に入学させてくれてありがとう、と。(狩野浩平)

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