どん底から涙のサヨナラ打、もらった勇気一振りに 日本文理・玉木君
28日、高校野球新潟大会決勝 日本文理2―1帝京長岡
延長十一回2死三塁。一打サヨナラの場面で、4番を打つ後輩が目の前で歩かされた。次打者席で、日本文理の玉木聖大(しょうだい)(3年)は冷静に受け止めていた。
力投を続けるエース田中晴也(はるや)(同)から声をかけられる。「お前が一番バットを振ってきたんだから自信を持て」。勇気づけられた。と同時に、「早く楽にしてやりたい」。強い気持ちで打席に向かった。
ここまで4打数無安打。スライダーやチェンジアップに手を焼き、3三振を喫していた。「初球から思い切りいってやる」。1球目、外寄り低めの変化球を狙いどおり振り抜いた。打球が右中間で弾むのが見えた。
「やっと打てたんだ」。公式戦初のサヨナラ打が、甲子園出場を決めるこれ以上ない場面で飛び出した。満面の笑みを浮かべ、本塁付近で待つ仲間たちと喜びを分かち合うと、今度は涙が止まらなくなった。
昨夏の甲子園に6番打者で出場し、2点本塁打を含む4打数3安打。新チームでも打線の中心として活躍を期待された。しかし、昨秋以降は不振が続き、春の県大会では準決勝、決勝と先発からも外され、どん底を味わった。
「本塁打を打てるところを見せたい、と知らず知らずのうちに考えるようになっていたのかもしれない」。飛球を狙うあまり右肩が下がっていたフォームの修正に取り組んだ。「チームのために打つ」と繰り返し自身に言い聞かせ、来る日も来る日も振り込んだ。
自らのバットで2度目の夢舞台への切符をつかんだ。ただ、浮かれた様子はない。「チームが勝つことが一番。一本でも多くヒットを打つ」。2018年以降、県勢は初戦突破を果たせていない。「まずは初戦に照準を合わせ、勝ち進んでいきたい」。さっそく闘志を燃やした。(友永翔大)