福知山成美の伊藤、五回参考の完全試合 「エースだから」制球力磨く
(22日、全国高校女子硬式野球選手権大会1回戦 福知山成美8―0全国高校連合丹波=5回コールド)
甲子園へとつながる2度目の夏は、福知山成美の3年生右腕、伊藤春捺の圧巻の44球で幕を開けた。
つかさグループいちじま球場(兵庫県丹波市)で行われた開会式直後の第1試合。先発した右横手投げの3年生エースはつけいる隙を与えない。
力のこもった直球で丁寧に低めを突き、得意のスライダーで芯を外す。
15アウトのうち、七つを内野ゴロで奪い、二回の三者連続を含め5奪三振。外野には一度も飛ばさせない。
一人の走者も許すことなく、5回コールドの参考記録ながら、完全試合を遂げた。
「走者を出したくないという意識で投げ込んだ。完全試合とかは意識していなくて、無失点で良かったというのが、正直な気持ちです」
そう笑った。
エースの自覚が芽生えたのは、昨秋だ。
新チームで臨んだ8月末のユース大会では死球を与えたり、球がすっぽ抜けたりと制球に課題を抱えていた。
決勝まで進み、初めて甲子園球場で決勝が開催された全国選手権を制したばかりの神戸弘陵と対戦した。
先発し、6回3失点。0―3で敗れ、悔しさだけが残った。
「自分が点を取られて負けた。1点あれば、ゼロで抑えて勝てる投手になりたい」
夏に向けて、制球の改善に取り組んだ。
腕力に頼らず、下半身の力を生かせるようにフォームを修正した。長い距離、短い距離ととにかく走り、太ももの筋肉もトレーニングで鍛えた。
「エースだから、誰よりも走らないといけないと思った」
神戸市出身。中学3年の夏、この球場で全国選手権に出場した福知山成美の試合を見た。
「大きな声を出して、みんなで団結していた。まとまったチームワークにひかれた」と進学を決めた。
「仲間が守ってくれるという安心感があった。楽しめました」と最後の夏、勢いよくスタートを切った。
24日の2回戦の相手は、今春の選抜4強の強豪・履正社だ。
「一球一球を大切に、打ち取っていきたい」
たくましく成長したエースは、次の目標をしっかりと見据えた。(佐藤祐生)