日大三島1年生、広陵の劇的場面を予習 2死満塁追い込まれて同点打
(静岡大会2回戦 日大三島4―2浜松商)
「思い切っていってこい」
右打席に向かう1年生の綱島健太に、次打者の3年生・京井聖奈(せな)が声をかけた。
「先輩に、つなぎますから」
綱島の言葉を聞いて、京井は「大丈夫。落ち着いている」と安心したという。
2点を先行された直後の四回、2死満塁。日大三島は安打と四死球で絶好機をつかんでいた。
綱島は2ストライクと追い込まれてからの3球目、内角球を詰まりながらも左前にはじき返し、2人の走者をかえす。
「いいところに飛んでくれました」
値千金の同点打を放った1年生は、一塁ベース上で右腕を突き上げた。
静岡県のお隣、神奈川県の伊勢原市出身。エースの松永陽登(はると)と同じチーム出身という縁もあり、日大三島に進学した。
俊足巧打とフットワークのいい守備で、すぐに二塁手のレギュラーをつかみ、1番も打った。ただ、大会前に調子を落とした。
2日前(16日)に、広島大会の広陵―広島新庄のインターネット中継を見た。
「九回2死満塁、ボールカウント2―3という場面があったんですよ。こういう場面で打てなきゃいけないと思って、『2死満塁』をイメージして打撃練習をしてきました」
まさに想定通りの場面での一打だった。
1年生の9番打者に、3年生の京井も続いた。左前適時打を放ち、相手のミスもあってこの回計4点。
京井は九回、両足がつった松永を緊急リリーフしてマウンドにも立った。
無死一塁。ここでも1年生が助けてくれた。二塁ベース寄りの強いゴロを綱島がひざを突きながら好捕し、4―6―3の併殺に。
「頼りになる1年生です。助かりました」
京井は後輩を手放しで褒めちぎった。
強豪・報徳学園(兵庫)の監督として選抜大会優勝経験もある永田裕治監督(58)が率いて3年目の夏。今春は38年ぶりに選抜大会出場を果たし、今夏もシード校として迎えた。
ただ、初戦の相手は春夏計17回の甲子園出場を誇る伝統校の浜松商。しかも、1回戦を勝ち上がってきている。
「うちは初戦。難しい試合になると覚悟していた」と永田監督。「1年生がよう打ってくれた。相手の浜松商を見習い、うちも粘り強い野球をしていきたい」
殊勲の1年生は「一つ一つのプレーを大切に。機動力でもチームに貢献したい」と3回戦への抱負を語った。(安藤嘉浩)