背番号1の孤独「重圧に立ち向かわないと」 大館鳳鳴の木村投手
(17日、高校野球秋田大会準々決勝、大館鳳鳴0―1秋田南)
昨夏準優勝の秋田南との息詰まる投手戦。大館鳳鳴のベンチでは、初回から女子マネジャーが、両手を合わせて祈っていた。
雨のマウンドでは、エースの木村拳士君(3年)が、ピンチにも表情を変えず、淡々と投げ続けた。
2年生だった昨夏も背番号1を背負った。先発した3回戦の横手戦は被安打2に抑えたが、0―1で負けた。試合後、先輩に「俺たちが打てなかったから負けた。ナイスピッチだった」と声をかけられて泣いた。
新チームになってからは苦しいマウンドが続いた。
昨年から活躍したことで、得意のチェンジアップを各校に対策された。
「みんなの期待より上にいかないといけない、と焦っていた。周りに注目され、その重圧にも立ち向かわないといけない」。背番号1は孤独だ、と思った。
この春は制球が乱れ、調子が上がらなかった。「もう一度、追い込まないと夏に間に合わない」。下半身を安定させるため、走り込みを重ねてきた。
最後の夏は、この日まで2試合を完投し、毎回三振を奪って勝ち上がった。
この試合も1人で109球を投げきった。八回に1点を失って迎えた最終回の攻撃。ベンチ前では仲間が「まだいける、絶対に勝つぞ」と大声を上げていた。
1年前と同じ、0―1で負けた。被安打3。「もっと(上に)いけたな、というのが率直な感想」。報道陣に短く言葉をつないだ。
試合後のベンチ裏。2年生で4番を打った捕手の佐藤陸君が泣き崩れていた。代わる代わる3年生が肩に手を回し、声をかけた。
「下級生で重圧がかかる役割。去年の自分を見ているようだった」。そう話していた背番号1は、バッテリーを組んだ後輩に「次の夏がある。しっかりと切り替えて頑張れ」と伝えた。(北上田剛)