茶色いご飯や特注プロテイン…練習中の補食、静岡の高校野球では
「食トレ」という言葉があるほど、食事は高校球児にとって大事な体作りの一つ。練習の合間に食べる補食からは、選手に力をつけさせようというチームの工夫が見える。静岡県内各校の補食の風景を取材した。
午後7時ごろ、バッティング練習を終えた駿河総合の選手が続々とネット裏に集まってきた。補食の時間だ。20合炊きの炊飯器で炊いているのは、普通のご飯と通称「茶色いご飯」だ。炊飯器を開けると甘辛い香りがただよう。
「ご飯が嫌いな選手にも食べてもらいたい」。駿河総合のマネジャー・鈴木美有さん(3年)は話す。体力をつけようと無理にたくさん食べ、食事が嫌いになってしまう選手を見てきた。誰もがおいしく食事をしてほしい。そんな思いでつくったのが、しょうゆやめんつゆを混ぜて炊く「茶色いご飯」だった。
選手たちの食べ方は様々だ。焼き肉のたれをかけたり、お茶をかけてお茶漬け風にしたり。選手たちはご飯をかきこむと、また練習に向かっていった。
掛川東の自慢は、練習後に飲むオーダーメイドのプロテインだ。体重を増やすため、炭水化物を多めに配合。さらに練習中には一口サイズのおにぎりも用意されている。
選手の補食を支えるマネジャーの一人が松下裕紀さん(1年)だ。中学時代は選手だったが、人の役に立ちたいとマネジャーに転向した。「選手と一緒に切磋琢磨(せっさたくま)しながら甲子園をめざすことにやりがいを感じます」。毎日120個のおにぎりを握り、選手の夢を後押しする。
各校が力を入れる補食だが、体作りにどう影響するのか。「練習前の炭水化物は、体力や集中力の維持、練習後は疲労回復に効果があります」。県内では静岡や加藤学園などに栄養指導をしている「コーケン・メディケア」(さいたま市)の熊倉明子さん(57)はそう解説する。
夏の大会があるこの時期は、暑さで自律神経が乱れたり、汗でミネラルが失われたりする。「スポーツドリンクだけでなく、普段からの食事が重要。特に朝ご飯はしっかり食べてほしい」と呼びかける。「日々の練習と食事で作った体でがんばってほしい」と熊倉さんは球児へエールを送った。(魚住あかり)