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勝利は何のため 県高野連会長・理事長に聞く

2022年7月4日11時00分

朝日新聞DIGITAL

 第104回全国高校野球選手権山口大会が9日、開幕する。練習を重ねた56校54チームが試合に臨み、1チームだけがトーナメントを登り詰める。「勝利」の意味、野球部のあり方、山口の球界のこれからなどを県高校野球連盟の藤村慎一郎会長と東堂昌治理事長に聞いた。(太田原奈都乃)

 ――運動部の「勝利至上主義」が行き過ぎているという指摘があります

 東堂理事長 勝ちをめざし、他をおろそかにしてはいけない。ただ、スポーツは勝敗を決めるものだ。勝つ喜び、勝ちに到達する達成感を経験してほしい。

 藤村会長 結果だけで生徒の3年間を判断してはいけない。勝てばいい、勝ったチームだけがすごい、というのは違う。負けても一生懸命練習に励んできたことが評価されるべきだ。

 東堂理事長 選手一人一人が大事な存在。部員が多いチームではベンチに入れないこともあるが、全員に役割を与え、認めてほしい。自分が認められていると感じられれば、やる気が出て力が発揮されるから。

 ――山口県の高校野球が直面している課題は

 藤村会長 高校野球人口が減っている。今回は3校が連合チームを組むが、9人そろわない学校が増えてきた。3年生が引退した後の秋の大会は、単独で出られない学校が増えるだろう。学校が離れていれば練習の機会を設けるのが大変で、教員の負担も大きい。やりたい生徒が野球ができる環境をつくり続けなくてはいけない。

 東堂理事長 高校選びの段階で、選手が福岡や広島など県外に流れている。中学の硬式クラブチームの大会は多くが県外開催なので、スカウトされて県外に出て行く子が多い。今後は部活動の地域移行が進む。中学の軟式野球部でなくクラブチームに入る生徒が増えれば、県外流出がさらに進み、野球人口の減少が加速する、と危惧している。

 甲子園をめざせる強さだけでなく、指導方法や指導者の人間性など、生徒をもっとひきつけるものが県内の高校に必要なのかもしれない。

 ――「教育活動の一環」としての面などから、部活動のあり方が問われています。県高野連は、これからの高校野球はどうあるべきだと考えますか

 藤村会長 暴言や体罰はいけない、と指導者に伝えている。厳しい指導も時に必要だが、本当に必要とされるものだけでなくてはいけない。指導者が同士のつながりを増やし、学校を越えて学び合えるよう、講習会などの機会をつくりたい。

 東堂理事長 やはり、将来の野球人口をいかに増やすか。コロナ禍で停滞しているが、高校生が少年野球の教室に参加し、交流する活動を進めてきた。少年野球でひじや肩を壊して野球を断念する子が増えているが、学年を越えた交流の機会に体のケアについて教えることもできる。選手や指導者だけでなく、試合を支える審判員の育成も課題だ。

 ――夏の山口大会で忘れられない一戦はありますか

 東堂理事長 2004年の第86回大会決勝、岩国対下関工。下関工の部長としてベンチにいた。2―1とリードして迎えた九回表2死2ストライク、同点打を打たれた。右前にポトンと落ちた。延長戦にもつれ込み、「あと一球」がなかなか取れない。とうとう勝ち越された。高校野球は最後の一球まで勝負が分からない、その教訓だった。

 その前年の第85回大会決勝、岩国対宇部鴻城もそうだ。宇部鴻城が勝って迎えた九回表、岩国の4番・投手がホームランで同点。延長戦で勝ち越した。

 藤村会長 母校の徳山が甲子園行きを決めた試合。1987年の第69回大会決勝で下関商と対戦し、甲子園に行けるかもしれないという瞬間、スタンドで震えたことを、今でも思い出す。卒業生も地域の人も気持ちを一つにするのが高校野球だ。

 最近では、この春の県大会の決勝戦、宇部工対下関国際。宇部工が四つ、併殺をとった。守備の連携がきちんとできているということ。ああいうゲームは見ていても「おおっ」と気持ちがいい。チームプレーのスポーツだと感じる。

 ――この夏、どのような山口大会を期待しますか

 東堂理事長 勝ち負けは最後までわからない。選手たちにやってきたことを出し切ってほしい。新型コロナと暑さに注意して、安心安全な大会をめざす。試合の途中などに選手や観客が水分補給する「ごくごくタイム」を設ける。

 藤村会長 3年生はコロナでずっと苦労してきた学年だ。選手も家族も指導者も我慢して我慢して、今大会を迎えただろう。今年は応援団も球場に入れる。それぞれにとって、一生の思い出に残る大会にしてほしい。

     ◇

■部活動のあり方は変わっていくべきだと思いますか

 思う28 思わない12 どちらでもない14 その他3

■どんな点が変わっていくべきだと思いますか(自由記述)

・練習時間を短縮したり、休養日を設けたりする

・教員の負担を減らし、働き方改革を進める

・部活動最優先ではなく学習にも配慮する

・少子化による部員数の減少に対策をとる

・高校野球界の旧態依然とした文化をなくす

・リーグ戦を普及させる

・私学と公立の温度差を是正する

・一生懸命に努力をしている生徒を評価する

■学校外の指導者による外部指導を取り入れていますか

 取り入れている32 取り入れていない16 その他9

■今後、外部指導を増やしたいと思いますか

 思う21 思わない8 どちらでもない21 その他7

*朝日新聞社は5月、県内の57校の野球部にアンケートし、部活動のあり方について尋ねた。

 ■勝利は何のため

・家族、学校関係者、地域の人に喜んでもらえる。選手は敗北から成長するが、勝利という目標を達成した喜びは、わずかな人間しか味わえない(21年優勝の高川学園・松本祐一郎監督)

・勝ちを目標にして初めて貪欲(どんよく)になれる。執念を燃やし、自信もつく。一方で、高校野球は教育の一環だ。スポーツマンシップにのっとらない、自己中心的な行為は許されない(19年優勝の宇部鴻城・尾崎公彦監督)

・勝ちに向かい諦めないことで、人は変われる。2年半で劇的な成長を遂げた先輩たちの姿がその証明だ。できないことをできるようになるまで徹底的にやることが欠かせない(17、18年優勝の下関国際・坂原秀尚監督)

*過去5年間の夏の山口大会優勝校への取材から

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