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離島の球児支える最新技術 元プロがVRを使って指導 島根・隠岐

2022年7月1日16時37分

朝日新聞DIGITAL

 島根県の隠岐諸島で唯一硬式野球部がある県立隠岐高校(隠岐の島町)が、VR(仮想現実)技術を練習に採り入れている。オンラインで指導するのは、元プロ野球選手たち。地理的なハンデを抱え、人数も少ない離島の球児を、最新の技術で支えようという取り組みだ。

 6月半ばの室内練習場。一人で黙々と素振りをするチームの主軸、和田陽世(ひなせ)君(3年)の頭には、黒い大きなゴーグルがあった。

 和田君が見ているのは、架空の野球場の映像。マウンドには大リーガーの菊池雄星投手が立ち、試合さながらのボールを投げ込んでくる。NTTデータが開発した、VRでプロの投手の球を体感できる装置「V(ブイ)―BALLER(ボーラー)」だ。腰やバットに付けたセンサーでデータを取り、頭や体の動き、タイミングの取り方なども数値化され、自分のスイングの特徴なども一目でわかる。「高校生が投げるボールとはスピードもキレも全然違う。こんな体験ができるのはすごく貴重です」と笑顔を見せる。

 高校は、本土から海を隔てて北へ約70キロの離島にある。部員は11人。練習試合にはフェリーで2時間かけて本土へ渡る必要があり、実戦の機会は限られる。コロナ禍で、島外から指導者を呼ぶのも難しい。

 そんな島の野球部にVRが導入されるきっかけは、東京五輪・パラリンピックだった。隠岐諸島の3町村がミクロネシア連邦のホストタウンになり、スポーツで隠岐全体をつなぎ盛り上げたいと、2020年秋に少年野球教室が企画された。当時、海士(あま)町役場に出向中で、開催に動いた国際協力機構(JICA)の高田健二さん(51)は「子どもたちに、島で夢を持って生きるきっかけをつくりたかった」と言う。

 ホストタウン事業に携わった大手コンサルティング会社「デロイトトーマツコンサルティング」に、東京ヤクルトスワローズで投手だった久古(きゅうこ)健太郎さん(36)が所属しており、指導を依頼。隠岐高校での指導の話も持ち上がった。

 島にいながら本格的な技術指導を受けられれば、本土の高校との「スポーツ格差」が少しでも埋まるかもしれない。高田さんら関係者の思いに、久古さんらも賛同。コロナ禍で来島は難しいため、昨年6月、同社とNTTデータの協力で、VRを使ってオンラインでの遠隔指導が実現した。

 島外からは誰も参加出来なかったが、役場の職員ら島の人々がデータの測定や機器の設営などを担当。昨年12月からは5カ月かけてデータを取得し、久古さんら元プロ野球選手3人が、オンラインなどでの指導を繰り返す形で実施された。

 渡部謙監督(34)は「技術力を上げるには実戦経験を積むしかないが、島外での試合には金銭的な負担も大きい。部内でも、限られた投手の負担を考慮すれば、あまり多く投げさせられない。VRはそうした課題をクリアする一助になる」と評価する。現在の部員はいずれも3年生で、秋以降の活動は見通せない状況だが、「VRをもっと子どもたちの指導に活用できれば、将来の島の野球人口の拡大にもつながるかもしれない」と期待を込める。

 VRを採り入れた練習で、和田君はスイングの際に頭の位置が上下にぶれ、目線が安定していないことがわかり、改善できたという。久古さんは「直球が得意な子がいれば、変化球打ちがうまい子もいる。時間をかけて変化を見ていくことで、それぞれに合ったアドバイスができた」と成果を語り、今後全国にある離島や山間部の高校にも指導を広げたいという。

 「地理的ハンデのある高校が甲子園に行くことができれば、地元が盛り上がる。地域の活性化に一役買えればうれしい」(野田佑介)

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