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選手やめてつかんだ成長 難病…マネジャー経験、復帰 杵築高

2022年6月30日11時00分

朝日新聞DIGITAL

 【大分】球場の空気を大きく吸い込んで、打席に立った。「この感じだ。懐かしい……」。杵築の樋口恵二(3年)が無心に直球を振り抜くと、鋭い打球が左翼線へ。二塁へ駆けて一塁側を振り向いたら、仲間たちがベンチからはみ出さんばかりに喜ぶのが見えた。春の県選手権の支部予選。やっと帰ってきた。あの時からどのくらいたっただろう。

 医師から聞いたこともない病名を告げられたのは3年前、中学3年になったばかりの4月だった。「潰瘍(かいよう)性大腸炎」。少し前から便に血が混じっているのに気づき、次第に悪化した。それまで大した病気をしたことがなかったのに一日に何度もトイレへ駆け込むようになった。病名を調べると難病に指定されていて、原因もよくわからない。「なぜ自分だけ……試合に出られないじゃないか」

 野球は小学2年から始め、中学では地元の硬式野球チームで内野手をしていた。薬で症状を何とか落ち着かせたが、試合には出たり出られなかったり。その頃だった。2019年夏の大分大会。第1シード校を終盤の集中打で破った杵築の野球を見たのは。

 野球がしたいから、病状を悪化させると言われた肉も野菜も我慢した。育ち盛りに食事制限はつらかった。やっと症状が落ち着いた20年春、杵築へ入学。「野球も大学進学もしたい」。ところが想像と違う高校生活が待っていた。

 コロナ禍だった。入学から1週間ほど通っただけで感染拡大防止のため休みになり、曜日ごとの分散登校もあった。念願の野球部も同学年だけで練習。その時間も1時間に限られた。

 病気が夏から悪化し、激しい腹痛に苦しんだ。部活どころか学校も休みがちになり、当時の監督に告げた。「選手、やめてもいいですか」。11月下旬の放課後。意外な提案が返ってきた。「わかった。マネジャーをやってみないか」

 選手をやめることは野球を辞めること、と思い込んでいた。戸惑ったが、「どこかでまだ野球に関わっていたいという思いがあった」。激しい運動をしなければ、病身の自分にも、チームでできることはある。

 女子マネジャーとグラウンドに出てマシンへの球入れ、ティー打撃の補助にノック。何でもやった。少し時間がたつと、選手たちの成長が手に取るようにわかってきた。毎日のようにノックにつき合った同級生の努力を間近で見た。日に日に流れるように球をさばくようになり、マネジャーとしてのやりがいを感じた。

 筋トレで同級生たちの体はみるみる大きくなり、体重が60キロを切った自分との差も痛感した。「うらやましい、自分もやりたい」との思いがずっとあった。症状を抑えるため、食事制限だけでなく冷たい飲み物も控えた。自分でぬるめの水を入れた水筒を持参した。

 「選手に復帰したい」と告げたのは今年3月になってから。辛苦と向き合った経験は、自分を一回り成長させたと思う。試合でエラーした仲間や、ピンチに汗をぬぐうマウンドの投手を「本当に励ますことができるようになった。自分も苦しい時があったから。今度は、自分が励ます番」。

 夏の舞台、3年ぶりの開会式が迫る。「一度も入場行進をしていない。だから、最初で最後の大会という気持ちです」 =敬称略(奥正光)

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